ミツバチの童話と絵本のコンクール

雨のふる日に

受賞並村 有華 様(京都府)

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 さぁ、お茶会を 始めよう。
誰が言い出すわけでもなく、どうくつに流れ出す水を 器に入れ始めました。
「ノロブン、この水はね、わたしらが住んでいた なつかしい丘を通って ここまで やってきたんだよ」
 うきうきした表情で、マンモスが 説明してくれました。
 鼻の長いネズミが、木のほらに入って スプーンにひとさじ ハチミツを盗んで……いや、もらってきました。
ぐっすりねむりこんでいる ミツバチたちには ないしょで、ね。
 ミツを 水にかきまぜると、あまくやさしい 幸せなかおりが あたりにただよいました。
お茶会のはじまりです。

 それは、楽しいお茶会でした。
 ノロブンは、自分たちが 住んでいる丘の 長い歴史を知りました。
ずっとずうっと昔、目の前にいる 大きな大きなトカゲさんが 丘に住んでいたんですって。
そのあと、大きなネズミさんや リスのようなおサルさんが 住んでいて……それから、きらいなクマさんが 住んで……。
「やがて、雪の降る 寒い日が つづくようになったんだよ」
と、マンモスが教えました。
「じゃぁ、大きなキバのおじさんが 最後の住民なの」
「いや、おれだ」
と、オオカミが ほえました。
「おれは、最近まで 上の丘に 住んでたんだ」
 すると
「そうじゃ。あの頃は、丘に 木がたくさん いたなぁ」
と、なつかしそうに 木のおじいさん。
 オオカミは、まだ若かった木の下で よく お昼ねをしていたんですって。
みんな、自分が暮らしていた頃の 丘の姿を思いだし、思い思いに 語り合いました。
「けどね、ノロブン。今は 皆、大の仲良しなんだよ」

 ノロブンは、皆が おいしそうにお茶をのむのを ぼんやりと見ていました。
(どんな お味なのかなぁ)
 よこから 木が、首をふって言いました。
  「ノロブンは、まだ この茶を のんじゃだめだぞ。ここにいるのは、昔 丘にいたやつら、つまり ぼうれいたちなんじゃよ。こいつらの茶をのむと、おまえは 死んでしまうぞ」
 えっと、ノロブンは 皆の顔を あらためて見ました。
どの顔も、陽気でいきいきとした 表情でした。
ノロブンは、ふしぎそうに 木にききました。
「木のおじいさんは、そんなにのんで 平気なの」
 皆、どっと、ふきだしました。
「平気じゃねえぞ」
と、犬のようなクマが言いました。
「腹のさけめが、茶をのむたびに ふかくなっていく。年がいっていくのさ」
 すぐあとをついで、オオカミが 笑いました。
「しかし このじいさん、茶会が やめられねえんだよ」
 そうなのと、心配顔でふりかえったノロブンに、木は にがわらいをしながら、また ごっくりと お茶をのみました。

 「さぁて、そろそろ 雨があがるよ」
 どうくつに落ちる水てきが 切れはじめたのを見て、鼻の長いネズミが 言いました。
おひらきの 合図です。
皆は、木とあくしゅをして 別れをおしみました。
「なあに、すぐまた 雨がふるさ」
 木は わざと 明るくふるまいながら、大きな大きなトカゲと だきあいました。
木がトカゲとはなれた時、幹には あの生臭いにおいが たっぷりとしみこんでいました。

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