ミツバチの童話と絵本のコンクール

ハルおばあちゃんのまほう

受賞小栗 理香子 様(神奈川県)

 みんなは、アキおばちゃんの
「さあみんな、せーの!」
という合図で、うたいはじめた。
「ハッピバースデー、ハルおばあちゃーん、ハッピバースデー、ハルおばあちゃーん、ハッピバースデー、ディア、ハルおばあちゃーん・・・・・・ハッピバースデー、ハルおばあちゃーん!」
 ハルおばあちゃんのほおが、パアッと赤くそまった。
「あらみんな・・・!まあまあ、みんな・・・!」
 みんなは、つぎつぎにプレゼントをわたした。
 かずやがハルおばあちゃんの頭に、タンポポのかんむりをのせ、のぞむが、ハルおばあちゃんの手に、タンポポの花たばをにぎらせた。しょうごは、タンポポのくきで作ったおもちゃを、まどべにおいた。
 そしてさいごになつおが、タンポポのわたげの、白い花たばをさしだした。
 ハルおばあちゃんの顔はかがやいて、まるでタンポポの女王さまみたいに見えた。
「まあまあ、まあ・・・・・・!なんてすてきなプレゼントでしょう!」
 ハルおばあちゃんは、
「ありがとうね、みんな、ありがとうね!」
と、なんどもなんどもくりかえした。
「こんなにすてきなおたんじょう日は、生まれて初めてよ!」
「でもさ、なつおのプレゼントなんて、かれてるんだぜ!」
 かずやが言うと、みんなわらった。
「あら、こんなにたのしいプレゼントはないわよ。わたし、タンポポのわたげをフーッてとばすのが、大すきだったの。なん年ぶりかしら?」
「やってみて!」
 なつおが言った。
「とばせるかしら?」
「やってやって!おたんじょう日のケーキみたいに、フーッてやって!」
 みんなも言った。
 わたげの花たばは、白くてまるい、一つの大きな花のように見えた。
 ハルおばあちゃんは、まどの外に向けて、わたげの花たばをかざすと、ヒュウッといきを吸って、フウーッと吐いた。
 わたげが、いっせいにとびだした。
 あたりいちめん、まっ白にそめて、思い思いのほうこうにとんで行く。
 雪のように。花のように。
 それは、まるでハルおばあちゃんがかけた、まほうみたいだった。
 いきをとめて見つめていたみんなも、わたげをおいかけて走りはじめた。
「すごい、すごいよ、雪みたいだ!ハルおばあちゃんがかけた、まほうだ!」
 あたりいちめん雪のようにまうわたげと、それをよろこんでおいかけるみんなを、ハルおばあちゃんは、目をほそめてながめていた。
 五月のおわりの風は、わたげを空まではこんできえた。

 それからすぐに、梅雨のきせつがやってきた。
 来る日も来る日も、雨だった。
 ゆめの森こうえんであそべる日は、なかなかやってこなかった。
 なつおは、まどから、雨のふる外をながめながら思った。
「いまごろハルおばあちゃんも、こんなふうに外をながめているかなあ・・・・・・。」

 そして、長い梅雨がおわると、とつぜん、まぶしい夏がやってきた。
「ゆめの森こうえんに行こうぜ!」
 なつおたちは、まってましたとばかりに、ひさしぶりに、ゆめの森こうえんにあそびに行った。
 そして、だれからともなく、ハルおばあちゃんのまどべに走って行った。
 まどは、しまっていた。
「ハルおばあちゃーん!」
「おばあちゃーん、こんにちはー!」
「いないの?」
 ハルおばあちゃんのまどは、なんだかいつもと、ようすがちがって見えた。
 しばらくすると、コトン、と音がして、まどがあいた。
 顔を見せたのは、アキおばちゃんだった。
「あら、みんな、来てくれたのね!」
 アキおばちゃんは、しばらく見ないうちに、すこしやせて、なんだか年をとったように見えた。
 なつおが言った。
「ハルおばあちゃんは?」
「ああ・・・・・・あのね、ハルおばあちゃんは、ちょっとぼうけんのたびに行ってくるって、出かけてしまったのよ・・・・・・。」
 アキおばちゃんは、えがおでそう言ったけど、目には、なみだがうかんでいるように見えた。
「そうそう、みんなに、ハルおばあちゃんからの手がみをあずかってるの。」
 アキおばちゃんはそう言って、白いふうとうをさしだした。
「これ、みんなで読んでね。おばさんいま、うめジュースを入れてくるわ。みんなが来たらごちそうするようにって、ハルおばあちゃんから言われてるのよ。」
 アキおばちゃんが行ってしまうと、みんなは、白いふうとうをあけてみた。

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