ミツバチの童話と絵本のコンクール

ハルおばあちゃんのまほう

受賞小栗 理香子 様(神奈川県)

『なつおくん、かずやくん、のぞむくん、しょうごくん。
 みんな、元気にあそんでいますか?
 わたしは、ぼうけんのたびに出ることになりました。
 こんど行くところでは、わたしもみんなのように、走り回ったり、
 ころげ回ったりできるようになるんですって!
 とっても、たのしみです。
 だから、しんぱいしないでください。
 会えなくなって、ちょっと、さみしくなるけれど。
 来年の春になったら、また、みんなに会いに、もどって来ます。
 みんな、わたしのことを、見つけられるかしら?
 わたしのまどには、これからも、いつでもあそびに来てください。
 アキおばちゃんが、まっています。
 おいしいうめジュースをよういして、まっています。
 それじゃあね。みんな、元気でね。
 来年の春、会いましょう!   ハル 』

 みんな、だまったままだった。
 だれも、なにも言わなかったけれど、ハルおばあちゃんがどこへ行ってしまったのかは、わかったような気がした。
 だけど、みんなに会いにもどって来るって、どういうことだろう?
 その日アキおばちゃんが入れてくれたうめジュースは、いつもと変わらずおいしかったけれど、ハルおばあちゃんのいなくなったまどべは、ポッカリとあながあいたようで、とてもさみしかった。
 ゆめの森こうえんのせみたちは、ミンミン、シャーシャーと、やすむことをしらずに、ないていた。

 つぎの春。
 ハルおばあちゃんのまどべをおとずれたなつおたちは、いきをのんだ。
 まどの下は、まるできいろいじゅうたんをしきつめたように、いちめんのタンポポばたけになっていた。
 いつのまに、こんなにさいたんだろう?
 みんなは、あの日の、ハルおばあちゃんのまほうを思いだしていた。
「ハルおばあちゃんだ!」
「うん、ハルおばあちゃんだよ!」
「ハルおばあちゃんが、春をつれて会いに来てくれたんだ!」
 まどから、アキおばちゃんがよんだ。
「さあみんな、うめジュースが入ったわよ。ハルおばあちゃんとタンポポに、かんぱいしましょう!」
「かんぱーい!」
 まあるいタンポポの花は、ハルおばあちゃんのえがおに、どこかにている気がした。
 小さなミツバチたちが、かわいい羽音をたてて、タンポポのまわりをいそがしそうにとんでいた。
 なつおは、小さくつぶやいた。
「ハルおばあちゃん、また、会えたね。」

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