ミツバチの童話と絵本のコンクール

ハルおばあちゃんのまほう

受賞小栗 理香子 様(神奈川県)

「あらあら、お母さんたら、いつのまにそんなにかわいいボーイフレンドができたの?」
「ウフフ、いいでしょ!」
「いいわねえ!わたしにもしょうかいしてくださいよ。」
「あらいやだ!そういえばわたしたち、まだおたがいのなまえもしらなかったわ。ごめんなさいね、ぼく。わたしのなまえは、ハル。こっちは、むすめのアキ。むすめって言っても、もうこんなにおばあさんだけれどね。」
「よしてくださいよ、それは、おたがいさまでしょ!」
 アキおばちゃんとハルおばあちゃんは、声をたててわらった。
 わらうと二人は、そっくりな顔になった。
「ぼくのなまえは、なつお。夏に生まれるって書いて、夏生。」
「あら、すてき!なつおくんっていうの?じゃあわたしたち三人で、春・夏・秋、だわねえ。」
 ハルおばあちゃんがわらった。
「ほんとうだ!」
「なつおくんも、どう?ジュース、ひえてるわよ。」
 アキおばちゃんはそう言って、なつおにコップをさしだした。
「・・・これ、むぎちゃ?」
「ううん、ハルおばあちゃんとくせいの、うめジュースよ。」
「いえいえ、わたしはもううごけないから、つくりかたをおしえただけよ。つくったのは、アキおばちゃん。うめをハチミツにたっぷりつけこんでつくったジュースだから、とっても体にやさしいのよ。」
「ふうん。いただきまーす!」
 なつおは、ゴクッとひとくちのんだ。
 ハチミツのあまさが、口の中にフワッと広がった。うめのいいかおりがする。
「おいしい!」
 ハルおばあちゃんとアキおばちゃんが、えがおになった。
 やっぱり二人は、わらうとよくにている。
「よかったら、お友だちもつれてらっしゃい。みんな、走り回って、のどがかわいてるでしょ?」
「うん、よんでくる!おーい、みんなー!」
 なつおがかけだすと、むこうのほうの木のかげから、
「あっ、いた、なつお!どこにかくれてたんだよ、さがしたんだぞ!」
 みんなが顔を出した。
 なつおは、しらないあいだに、初めて一ばんになっていた。

 それからというもの、みんなは毎日のように、ハルおばあちゃんのまどべにあそびに行った。
 ハルおばあちゃんは、いつもみんなにやさしいことばをかけてくれたし、みんながあそんでいるのを、ベッドの上からたのしそうにニコニコとながめていた。
 そしてみんなに、ハルおばあちゃんとくせいの、うめジュースをごちそうしてくれるのだった。

 ある日、アキおばちゃんが、みんなにこっそり言った。
「明日は、ハルおばあちゃんのおたんじょう日なの。ないしょにしてて、みんなでとつぜんハッピーバースデーの曲をうたって、ハルおばあちゃんをびっくりさせてみない?」
 みんな、大さんせいだった。
 ハルおばあちゃんは、自分のたんじょう日のことなんて、すっかりわすれているらしい。
(ハルおばあちゃん、きっと、おどろくぞ!)

 つぎの日、なつおたちは、ゆめの森こうえんの原っぱで、タンポポをつんだ。
 かずやは、そのタンポポで、花のかんむりをあんだ。
 のぞむは、家からもってきたリボンでむすんで、タンポポの花たばを作った。
 しょうごは、竹ひごをタンポポのくきにとおして、フーッとふくとクルクル回る、タンポポのおもちゃを作った。
 なつおは、白いわたげになったタンポポだけを、たくさんつんだ。
「なつお、かれたのばっかりつんで、どうすんだよ?」
「じみー!」
「アハハハ!」
「なんだよ、いいだろ!」
 それは、みんながそれぞれ考えた、ハルおばあちゃんへのプレゼントだった。
「あら、今日はみんな、どうかしたの?」
 いつもは元気に走ってくるみんなが、今日はおとなしいものだから、ハルおばあちゃんは、ふしぎそうにそう言った。
 みんなは、せなかにプレゼントをかくしていたから、いつもみたいに
「ハルおばあちゃーん!」
とかけよることができなかった。
 みんななんとなく、おたがいの顔を
「うふふ。」
「えへへ。」
と見合いながらモジモジと、ハルおばあちゃんのまえにあつまった。

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