ミツバチの童話と絵本のコンクール

雨のふる日に

受賞並村 有華 様(京都府)

 木は、ついに 丘の下に出来た 広いどうくつに 着きました。
ワッハッハッ。ヒッヒヒッ……。
そこでは 色んな笑い声が、まわりの岩に ひびきあっていました。
 ノロブンは、何事だろうと、そっと 木の葉から 顔を出してみました。すると、ギラギラと光るおそろしい目が あらわれました。
「グオーッ」
 地なりのような うなり声に、ノロブンは もうびっくり。
「わぁーっ、トカゲの ばけものだぁーっ」

 あわてて 葉のかげに かくれ直すと、木が、大きな体をゆすって 笑いました。
「ノロブンだったのかい、わしの頭の中に いたのは」
 天にもとどくかと思われるほど 大きなトカゲは、奥に逃げこんだノロブンに 息をふきかけました。
「わっ、ひどいっ」
 生臭い息に 目もあけていられません。トカゲのばけものは、もっとよく見ようと、木の枝に 顔を近づけました。
「木のじいさん、この ちっこい虫を ひねりつぶしてやろうか」
 木は、ゆかいそうに また 体をゆすりました。
「許してやっておくれよ。この子は ノロブンといってな、毎日 わしのうでや手のよごれを とってくれるんじゃから。ていねいに ていねいにのぅ」

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