ミツバチの童話と絵本のコンクール

ぼくの変わったお父さん

受賞北浦 実季 様(大阪府)

 ぼくのお父さんは、自まんじゃないけど、ミツバチです。羽が生えて、はりがあって、こわい、ただのミツバチです。
 お父さんは、もともとハチミツの会社で、つとめていたんだ。ある日の朝、お父さんの会社のハチミツが、キッチンのテーブルに置いてあったんだ。それを、お父さんは、
「おっ、うまい。」
と言いながら、スプーンですくって、ペロペロペロ。またまた、ペロペロペロ。ハチミツを全部さっぱり、きれいに、たいらげた。
ここまでは、まだ良かった。次がいけなかった。急にお父さんがいなくなったので、
「お父さーん。」
って、さがしていたら、
「おーい。」
って、一ぴきのミツバチが、ブンブン。このミツバチが、お父さんだったってわけさ。ということで、お父さんがハチになったのは、こういう事があったからなんだ。でも、自分が食べすぎで悪いのに、ぼくが、はずかしくていやな思いをしないといけなくなったんだ。お母さんは、
「そのくらい気にすることないでしょ。」
って言うけどさ。

 まず一つ目。参観日。お父さんは、あっちでブンブン、こっちでブンブン。おまけにお母さん達は、
「ギャー。」
すると、八谷先生は、
「お母様方。このミツバチは、はち・みつお君のお父様ですので…。」
なーんて。後でぼくの前で、ひそひそしたりジロジロ見られたり。先生もみんなもひどいよなあ。

 そして二つ目。お父さんの仕事を調べて、ノートに書く宿題があったんだ。みんなぼくのお父さんは、ハチだと知っているから仕事の内容を発表する時、
「えー、本当?」
とか、
「ハチなのに仕事をするなんてー。」
などなど、いろいろ言われたよ。はあ。
 最後に三つ目。家庭訪問で先生は、びくびくしながら、
「み、みつおくんは、べ、べんきょうは、けっ、けっこう、できて、ま、ますよ。」
って声はふるえてるよ。ハチのお父さんっていやだけど、やっぱり自分のお父さんに、そうやってこわいイメージをもたれると、ちょっといやだな。

 こーんな感じで、いろいろあるんだ。ところで、お父さんの仕事って何をしているか、わかるかなあ。じゃあ、教えてあげる!仕事は、いつも通りハチミツ会社だけど、する事は全く変わったんだ。それは本当のハチの巣からミツを取ってくる仕事。お父さんは本当のミツバチじゃないのにさぁ。それとハチミツの試食係。お父さんは、喜んであの時と同じように、ペロペロしてるんだ。もうこれ以上、食べすぎたらお父さんじゃなくなって、本当のミツバチになっちゃうよぉ。お父さんとっても喜んでいるけど、ミツバチになってもいいのかな。心配だ。

 会社へ行く時は、ブーンって飛んで行くよ。でも、フラフラッ、ブーンかな。だってまだなれないから不安定なんだよ。でも飛ぶのは気持ち良さそうだから、
「ぼくだって飛びたいなー。」
って言ったら、
「でも飛ぶのは、けっこうむずかしいから、お父さんみたいに上手に飛ぶには、時間がかかるんだよな。」
 なーんて、かっこつけちゃって。お父さん、上手に飛べないくせに。お母さんだって、うんうん、うなずいてる。お父さんもお母さんも、どっちもおかしいよぉ。

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