ミツバチの童話と絵本のコンクール

ぼくの妖精

受賞神山 美奈子 様(大阪府)

 やがて中学生になった。ぼくはまた父親の仕事の都合で引越したので、チームのみんなとは違う中学へ進んだ。
 そこでも野球は続けた。あいかわらずぼくはいつも補欠だった。でも野球を好きなことはだれにも負けなかった。


 高校二年のとき、また小学校のときにすんでいた山手町にもどってきた。そして山手高校に編入した。ここでも野球を続けようと決めていた。
 グランドに行き、さっそく練習に加わった。
 季節は五月。グランド横のつつじが満開だった。
 素振りをしていると、つつじのそばにいた女の子と目が合った。
(おっ、かわいい子!)
 その子がぼくのほうへ近づいてきた。ぼくは少しどきどきしながらさらに力をいれてバットを振った。
「あんた、大きくなったからってバットふりまわしちゃだめよ。」
 聞き覚えのある声におどろき女の子の顔をじっと見た。色は白く、ぼくより背は低いけど、あのみつばちのブン子だ。
「うん、バッティングはコンパクトに、だろ。」
 ぼくはあまりにもかわいくなったブン子にどぎまぎしながらそう答えた。
「そうよ。がんばったらあとではちみつレモンあげるから。」
 ほほえみながらブン子はまたつつじの花のほうへもどっていった。
 ほかの女の子とつつじのみつを吸ってはしゃいでるブン子は、ぼくの目にはみつばちの妖精にうつった。

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