健康食品、化粧品、はちみつ・自然食品の山田養蜂場。「ひとりの人の健康」のために大切な自然からの贈り物をお届けいたします。
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「ミツバチのはなしだが」と王様。
シンのはなしをきいて、王様はミツバチに興味をもったようでした。
「なぜ姫をさしたりしたのだろうな。たわむれかな」
「いいえ」とシン。「ミツバチはたわむれで人をさすようなことはしません」
「しかしミツバチはいつもハリをもっているのだ。たまには使いたくもなるものだろう」
「王様。ミツバチは人をさすと死んでしまうのです」
「ほんとうか」王様はうなりました。「一度さすだけで死んでしまうのか。それはしらなかったな」
「ミツバチにはおもしろい習性があります」とシン。
「一匹がだれかをさすと、そのにおいにきがついたミツバチもさしにくるのです」
「ふうむ。ではなぜ姫を敵とみなしたのだ」
「それはたぶん」シンは声をひくくしていいました。
「ミツバチのこの習性を悪用した人がいるからです」
そのときです。つえを立てて食事していた魔女が、テーブルの下につえをいれました。
まわりの人々はぶどう酒に酔い、笑いさざめき、だれもきにしていないようです。
しかし王様と話しながら魔女のしぐさに注意していたシンは、すぐにきがつきました。
チャリン。シンはスプーンをおとしたふりをしてテーブルの下をのぞきました。
「あっ!」
つえの上部がパキンととれ、そこからミツバチがつぎつぎに飛びだしていました。
とうとう悪だくみを実行したな、とシンは思いました。ぐずぐずしてはいられません。
テーブルの下にさっともぐりこみ、魔女の手からつえの上部をうばいました。
夕食の会は大さわぎになりました。テーブルはたおれ、人々は悲鳴をあげてにげました。
シンはルビーをくるくるとまわして小ビンをとりだしました。
「あっ」魔女はあおくなってあとずさりしました。「そなた、それがなにかしってるのか?」
「知ってるとも!悪い魔女め」
シンは小ビンのせんをぬき、魔女にむかってなげました。
パリン!
小ビンは魔女の手にあたってくだけ、中にはいっていた液が魔女に飛びちりました。
するとミツバチがわっと魔女にたかり、手や顔をさしました。
「ギャッ」
魔女はつえをふりまわし、なにか呪文をとなえました。しかしなんの魔法もおきません。
赤いルビーがとれていたので、黒いつえはやくにたたなかったのです。
「ええい、こしゃくな!」
魔女は黒いつえをなげだし、赤い目の大きなカラスに変身しました。
バサバサッ。
大きな羽音をたてると、あっというまに窓から飛びだして逃げていきました。
「なんと赤い目のカラスだ!黒魔女だったのか!」
おどろいてさけんだのは王様でした。
王様はとなりの国に住む黒魔女のうわさを耳にしていたのです。
「黒魔女?」とシン。「それはなんですか?」
「うむ。はらぐろいことを色々とたくらむので有名な魔女なのだ」
王様はすぐに使者を派遣し、となりの国の城に急行させました。
「黒魔女をつかまえてください。いまがチャンスです。
黒魔女はつえをもっていません」
ほどなくとなりの国から使者がありました。
「おかげさまで黒魔女をつかまえました。その悪だくみもはっりしました」
使者の話では、なんと黒魔女はとなりの国のハチミツ職人をすっかり支配していたのでした。
黒魔女はハチミツに「黒いたましいの魔法」をかけ、
それをまわりの国々にばらまこうとしていました。
そこでこの国のミツバチをみな殺し、ハチミツを買わせようとたくらんでいたのです。
「黒いたましいの魔法」はおそろしい魔法でした。
そのハチミツをなめた人は次第にあらそいを好むようになります。
争いを好む人々が増えると、ついには戦争にさえなるという魔法でした。
「じつにおそろしい魔女だ」と王様。
「どうして黒魔女は戦争を好むのでしょうね」とシン。
「活躍できるからだ」と王様。「国が平和では、黒魔女のでるまくなどないのだよ」
シンは王様から「英雄の旗」をもらいました。お姫様からはキスをもらいました。
王国にもとの平和がおとずれました。
いよいよわかれのときがきたようだ、と画家は思いました。
王様もお姫様もかなしい顔をしました。
しかしシンは出発することにきめました。絵の勉強をする旅をつづけるつもりでした。
「また来年の五月にきます」
画家の船はゆっくりとまいあがり、空にむかって飛びたちました。
その後、王様の行動に変化がおきました。
王様はいそいそと城のそとにでるようになりました。
草の上にねころび、あるいは街の石段にすわり、人々と気軽に話をするようになったそうです。
その後、お姫様の行動にも変化がおきました。
お姫様はスケッチブックと色鉛筆をかってもらい、熱心に絵の勉強をはじめたそうです。