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わかい画家がいました。シンという名前でした。
シンは小さいけれど住みなれた船をもっていました。
星から星へ旅をつづけ、絵の勉強をしていました。
シンは青い星にやってきました。
「やあ、なんて美しい星だ」とシンはつぶやきました。
「青い宝石のようにかがやいているぞ。きっと心やさしい人々が住んでいるにちがいない」
青い星には小さな王国がありました。
王国は平和でした。戦争もあらそいもなく、人々はのどかにくらしていました。
王国には王様とお姫様がいました。
お姫様は九歳。日ましに美しくなっていくと評判でした。
王様は五十九歳。
五十歳のときの王様にはじめてできた子どもが、このお姫様だったのです。
王女様はいませんでした。
お姫様の誕生とひきかえに、王女様はあの世に旅だってしまったのでした。
画家が王国にやってきたのは春でした。
春になると、王国の人々はうきうきしたおまつり気分になります。
五月になると、城で「お姫様の誕生日祝い」があるからです。
国中の人々が城のまわりに集まり、うたったり踊ったりして陽気にさわぐのです。
王様の誕生日も五月でした。
そこで王様は自分の誕生日祝いもかねて「お姫様の誕生日祝い」を盛大におこないました。
さて、今年の「お姫様の誕生日祝い」はかつてない盛大さになるといううわさでした。
というのも、今年はお姫様が十歳に、王様が六十歳になるからです。
人々がお祝にぞくぞくと城にやってきました。
シンもスケッチブックと色鉛筆を持って見物にいきました。
人々が心からよろこんでいる様子をみて、小さいけれどいい王国だと思いました。
祝砲がドドーンとひびき、たからかにラッパがなり、人々がわあっと歓声をあげました。
城のバルコニーに王様とお姫様がでてきたからです。
なるほどかわいらしいお姫様だ。画家はそう思いながら、お姫様をスケッチしました。
十歳になったばかりのお姫様は愛らしい少女でした。
頭にレンゲの花かんむりをつけ、ピンクのドレスをきていました。
まるでレンゲの花の妖精が城にまいおりたようでした。
お姫様は人々にむかって手をふり、にっこりとほほえみました。
そのときです。
一匹のミツバチがレンゲの花かんむりの中からブーンと飛びだしました。
お姫様はハッとおどろいて手をひっこめました。
しかしミツバチはお姫様のほそい首をチクッとさしたのです。
お姫様はミツバチにさされたことなどありません。キャッとさけんでたおれてしまいました。
みていた人々はみなどよめきました。
王様はあおくなってお姫様をだきあげ、城の中にひっこみました。
これは大変なことになった、とシンは思いました。
シンは「お姫様の誕生日祝い」を見物したらこの国からさるつもりでした。
しかしお姫様のようすがきになり、城の中に走りました。
シンは少年のころにミツバチの巣箱に近づき、さされたことがありました。
ミツバチにさされたときは、すぐにハリをぬかなければなりません。
そうしないと皮膚にのこった毒袋から毒がどんどん体にはいるのです。
城の人々はそれをしっているだろうか。
城のなかは大さわぎでした。
シンはだれにもとがめられずに、城のおくにずんずんはいっていきました。
あるへやの前でシンはハッと足をとめました。王様の赤いマントがみえたからです。
王様は小さなベッドのわきに立っていました。
シンは急いでそこに行き、お姫様の首をみました。
なんということ!ミツバチのハリはささったままでした。
説明している時間はありませんでした。
シンは王様をおしのけるようにして手をのばし、お姫様の首からハリをぬきました。
王様はおどろいて画家をみました。
「そなたはなにものだ!」
「わたしは旅のものです。そのようなことより、早く毒をすいださないと大変です」
シンは気絶しているお姫様に「失礼」とひと声かけ、お姫様の首に口をつけました。
チュッと毒を吸いだし、ペッと手のひらにはきだしました。
これでひと安心。シンは手の甲でひたいの汗をぬぐいました。
王様はあっけにとられて画家をみていました。
まわりにいた城兵たちはふとどきものとみて、画家にいっせいにやりをむけました。