文化セミナー

第22回 「くらしの中の長寿学―身近な薬草と食卓の漢方―」

去る2月28日(土)、講師に広島大学医学部附属薬用植物園助教授 神田博史先生をお招きし、「くらしの中の長寿学―身近な薬草と食卓の漢方―」と題してご講演いただきました。
今回のセミナーでは、ドクダミ、ゲンノショウコ、タンポポなどの身近な薬草、キキョウ、シャクヤクなどの漢方薬草や、ゴマ、ウコンなどの現在では食材と思われている薬草の効果や利用方法などをわかりやすく説明していただきました。

内容

講演の様子

漢方とは、明治時代に西洋医学が伝えられるまでの、わが国の医療全般を言ったもので、治療方針は、身体のバランスを保つことにあります。バランスが崩れたときは、「実すれば瀉(しゃ)し、虚すれば補う」。つまり、熱すれば冷まし、寒すれば温めるということが基本です。病になって治療することは当然のことですが、「上工は未病を治す」という言葉があるように普段から食事に配慮して病気にならないようにする事が大切です。紀元前の時代に、既にこのような考え方があったことに驚かされます。日本が世界一の平均寿命を誇っているのは、何か秘訣があるのです。それは、伝統的な食文化に因るもので、これまでの食生活習慣に大きな間違いが無かったと言うことです。食生活によって命を養うことが出来れば、それはもっとも自然なことであり、日常の食事こそまさに良薬です。バランスのとれた食材を美味しく頂くことが健康の秘訣で、この秘訣は、日本人の食生活そのものであります。お屠蘇(とそ)、雑煮、お節料理、七種(草)粥などを例にとってみると、旬を味わい、香りを味わい、色を味わう、そして行事を楽しむ食事学なのです。
最後に、住んでいる五里四方の食物を食べていたら病気にならないという「地産地消(ちさんちしょう)」の考え方や、土地がもたらすあらゆる環境の影響を受けている人と、土地は一体であるという「身土不二(しんどふじ)」の考え方も大切にして頂きたいと思います。

<神田博史助教授プロフィール>
昭和24年広島県生まれ。薬学博士。広島大学医学部大学院修了。厚生省国立衛生試験所生薬部(厚生技官)を経て、広島大学医学部附属薬用植物園助教授となる。著書に、『図解 やさしい薬草づくり』(家の光協会)、『広島県の薬草』(中国新聞社)などがある。
神田博史助教授
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