山田英生対談録

予防医学 〜病気にならないために〜

竹熊 宜孝氏×山田 英生対談

食も甘いが、親も甘い

子供の時からメタボ予防

農は生き方
山田

最近の子供たちは背も高く、体格も私たちの子供の頃に比べて格段とよくなりました。その一方でいろいろな病気が増え、特に肥満は約30年前の2倍に増えた、とさえ言われています。しかも、大人だけの病気と思われていたメタボリック症候群がついに子供の世界にまで押し寄せてきました。厚生労働省の研究班も6〜15歳を対象とする「小児メタボリック症候群」の診断基準を作成するなど、今や生活習慣病は子供の時から予防対策を進めなければならない時代になってきたようです。

竹熊

肥満児の中には、小学生の頃から動脈硬化が始まっている子もいます。子供の時に肥満になると、大人になってもなかなか治りにくい。そうなると、心筋梗塞などの心臓疾患や脳梗塞などの脳血管障害、糖尿病などのリスクが一段と高まる恐れもあるだけに肥満は、実にやっかいな病気といわざるを得ません。

山田

私たちが子供の頃は、まるまる太った子供は健康優良児といわれましたよね。食べるものが今のように豊富でなく栄養も不足気味でしたから、「体重が重い」ということは、それだけで健康の証でした。それが今では、健康どころか、生活習慣病の元凶になっていますからね。

竹熊

昔、「赤ちゃん大会」というのがあったでしょう。1歳くらいまでの乳児を集めて保健師さんが育ち具合をチェックする大会ですが、あれも体重と身長を中心に健康優良児かどうかを決めたんです。また、「健康優良校」を選ぶイベントもありましたね。子供たちの健康づくりを表彰する制度ですが、あれも体重や身長が重要な決め手の一つでした。終戦後の食糧難の時期に、子供たちの健やかな成長を願って始まった行事ですから当然といえば当然ですが、当時としては体重が健康か否かを判断する重要な目安だったことは間違いありません。

食生活の乱れが肥満招く

山田

今、街中や家庭などでも片手に甘い飲み物、もう一方にスナック菓子などを抱えている子供たちの姿をよくみかけます。おやつだけでなく、今の子供たちはファーストフードなどをよく食べますね。働いているお母さんが多いから、やむを得ない面もありますが、3時のおやつは4度目の食事とも言われ、昔はお母さんたちが直接握ってくれたおにぎりや手作りのお菓子が多かったような気がします。それが今は、おにぎりといえば、コンビニやスーパーで買うものと思われていますね。

竹熊

確かに、子供たちの乱れた食生活が肥満に悪影響を及ぼしていることは否定できません。ファミリーレストランに入って、子供たちに何を食べたいかと聞けば、きまって「お子様ランチ」と答えるでしょう。私はお子様ランチがけっして悪い、とは言いませんが、その中身が問題なんです。

山田

チキンライスやオムライスに、ハンバーグやエビフライ、それにジュースなどの飲み物がセットになっています。いかにも子供たちが好きそうなものばかりで、ご飯の上には国旗が立ち、おまけにオモチャまでついています。子供連れの家族を狙った企業の戦略が見え隠れしているように私には思えてなりません。6歳ごろから11歳くらいまでの間に慣れ親しんだ味覚は、その後の食事の好みに大きく影響すると言われています。かの有名なファーストフードメーカーでは、子供をターゲットとする戦略を立てられているそうですが、店側の経営効率化の理由で、メニューが増えた分、子供たちの食の選択肢が狭くなったことは確かです。砂糖まみれの脂っこい食べ物に慣れ親しんだ子供たちが、40代、50代になっても同じようなものを食べている姿を想像したら、ぞっとしますね。

竹熊

子供のときの食べ癖は一生を支配しますから、よほど注意しないといけません。現代は「毎日がお正月」というくらいの飽食の時代。ことわざに「暖衣飽食 風邪のもと」というのがあるでしょう。暖かい着物を着て、好きなものを腹いっぱい食べていれば風邪を引きやすくなる、との喩えなんですが、それだけ、何不自由のない、贅沢な生活をしていれば病気になりやすい、と警告しているんです。風邪も甘やかされた状態のときによく引きますから。

米消費減って砂糖増える

山田

自律神経が副交感神経優位になった時、風邪を引きやすいと言われていますよね。

竹熊

しかも、今の子供たちは食べ過ぎに加え砂糖づけ、油まみれといっても言い過ぎではありません。特に問題なのが砂糖。例えば、日本のパンは、砂糖がいっぱい入っているうえに油で揚げてあるのが多いでしょう。パンというよりケーキといったほうがいいほどで、うちによく来るドイツの男性もパンをすすめると、「日本のものは、いらない」と言っては、ドイツから小麦粉を取り寄せ天然酵母で焼いて食べています。和食だって、お寿司も「砂糖めし」と言われるくらい、砂糖をたくさん入れ、酢をかけているでしょう。いなり寿司なんかは特にそうです。他にも煮魚や野菜の煮しめ、すき焼き、酢の物、甘酒だって砂糖がたっぷり入っているでしょう。

山田

確かにそうですね。今、子供の低血糖症が問題になっていますが、これも砂糖の摂り過ぎが原因の一つではないかとも言われています。低血糖症になった子供は、無気力になったり、時にはイライラし、キレ易くなることもあるようです。最近、子供の暴力行為が多発していることも、これが一因なのかもしれませんね。

竹熊

無関係ではないでしょうね。子供たちの大好きな飲み物も砂糖のほかに人工着色料や香料などで色や匂いをつけていますが、子供の頃から飲み続ければ、味覚が変わってしまいますよ。今の食品業界は、まさに砂糖漬けといってもいいほどです。砂糖の消費量は、どんどん増えて年間1人当たり平均で約20キログラムとも言われています。コメの消費量が1人当たり年間約60キログラム弱ですから、実にその3分の1に当たる量を摂取している計算になりますね。

山田

総務省(旧総務庁)の家計調査でも、お菓子類の購入金額は1世帯当たり年間で平均6万5千円で、米やパン、麺類などの穀物購入額(約7万円)と大差ありません。これでは、ご飯と同様、毎日お菓子を主食のように食べているようなものです。

竹熊

その砂糖も精白した白砂糖ばかり。精白すると、ビタミンやカルシウムといったミネラルが失われるんです。砂糖の摂り過ぎは虫歯だけでなく、アレルギーや糖尿病、心臓病などの原因にもなりやすい。病気になりたくなければ砂糖を、まず摂り過ぎないこと。成長期にある子供の場合は、特にそうです。

山田

先生もかつては、大変な甘党だったとうかがっていますが…。

竹熊

沖縄にいた頃は、缶ジュースは1日5本ぐらい空け、アイスクリームやチョコレート、ケーキも手当たりしだいに食べました。ステーキも安くておいしいからよく食べ、その結果は、肥満、偏頭痛、アレルギー、高脂血症、糖尿病まで併発し、子供たちも肥満や虫歯に悩まされました。ところが、砂糖の害を知って、家族全員で砂糖を断ってみたら肥満だけでなく、他の症状もウソのように消えました。

山田

不思議ですね。

低下する家庭の教育力

竹熊

「子供は甘やかすな」とよく言うでしょう。「わがままをさせるな」という意味のほかに、「甘いものを必要以上に与えるな」という意味もあると思うんです。もちろん、甘いものがすべて悪いとは言いませんよ。大切なのは、食べ方や使い方を親がよく知ったうえで与えること。野菜でもニンジンやカボチャが嫌いな子が多いですが、元はといえば親が嫌いだから子供も真似して食べないだけ。ニンジンやカボチャに多いビタミンAが不足すれば、夜盲症などになったりするのはご存じでしょう。また胚芽米などによく含まれるB1が欠乏すれば脚気や肩こりなどになるのは、よく知られています。こうしたビタミンが欠乏すれば、身体にゆがみが出てくるのを親はよく勉強したうえで食事を作ることが大事です。

山田

親は子供たちにとってお手本でもありますから、きちんとした考えや知識を持ち合わせていないと、正しい食が伝わっていかないと思います。昔は母親が食の考え方や料理法などを娘や嫁に教え、さらに孫へと代々伝えていったものですが、今は核家族化で伝わりにくくなりました。食についての家庭の教育力が随分、落ちたような気がします。それだけ子供たちは、食べ物の情報をテレビのCMなどから得ているようです。CMを流す企業側も子供を1人の消費者としてとらえ、その欲望を刺激して買わせようと、子供たちの嗜好を煽っているような気がしてなりません。食に関する情報は、大人になっても重大な影響を及ぼしますから、CMを流す側も、その内容が子供たちの健全な育成に悪影響を及ぼさないかを、よく考えて流すべきだと思いますね。

竹熊

もう一つ、気になるのが、食べ方なんです。食べるというより飲み込むといった方がふさわしいほど早く食べる人がいるでしょう。特に肥満の人に多い。「早飯食いの大飯ぐらい」という言葉がありますが、急いで食べるのは肥満のもと。だから話をしながら、よく噛んでゆっくり食べる。一口食べたら箸置にハシを置いて、また食べる、というぐらいが丁度よいかも知れません。しかも、腹八分目。食習慣は食べ物だけでなく食べ方にも問題があるのです。「病気治しは食いぐせ直し」と言われるほどですから、食べ方の悪い癖は子供の時から直すよう心掛けてほしいですね。

山田

他に子供たちの健康を守るには、どんな食生活を心がければよいでしょうか。

竹熊

まず、間食を減らすこと。親は子供が間食しなくても済むように栄養のバランスを十分考えて食事をつくり、3度3度きちんと食べさせることが基本だと思いますね。

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