健康食品、化粧品、はちみつ・自然食品の山田養蜂場。「ひとりの人の健康」のために大切な自然からの贈り物をお届けいたします。
竹熊 宜孝氏×山田 英生対談
日本も豊かで、便利な時代になりました。日本人全体の金融資産は1400兆円を超え、高級マンションや車を持ち、年間1700万人以上の人が海外旅行に出かけています。「1つ星」「2つ星」…と、星の数で評価されたレストランで食事をするのが、現代人のステータスであるかのように、多くの人が世界のグルメを楽しんでいます。こうした豊かさと飽食の陰で、生活習慣病は増え、医師不足も顕在化し、地域医療は崩壊の危機に直面しています。
確かに日本は、豊かには見えますが、見せかけだけの豊かさのように思えてなりませんね。豊かさとは、経済的な豊かさだけでなく、心の豊かさが伴わなければ、本当の豊かさとはいえないのではないでしょうか。今の日本人は、物の豊かさだけを求め、何でもお金で解決しようと物欲のとりこになっているような気がしてなりません。街には食べ物があふれ、その食の乱れによって多くの人が食原病に悩まされています。方向感覚を見失い、食べ物がつくる「生命の尊さ」への感覚がマヒしているといっても過言ではありません。私は「医・食・農は自然に学べ」と口癖のように言っていますが、人間には、自然から学ぶ点がたくさんあるように思いますね。
先生は、ニワトリ、ウマ、イヌ、ヤギ…といろいろな動物を飼っておられますが、動物から学ぶことは結構、ありますか。
うちではニワトリのチャボを飼っていましたが、昔から「ニワトリは裸足で風邪ひかぬ」という言葉があるでしょう。確かに、土の上で飼っているニワトリは風邪をひきませんね。ニワトリは夜になると鳥目のため、どこにエサがあるかわからないので夜食をとらないのがふつうなんです。暗くなると木の上にとまって早く寝て、朝になると「コケコッコー」と鳴いて早起きするんです。それに比べ人間は毎晩、夜遅くまで飲んで食って騒いで…。こんな生活をしていたら病気にならないほうがおかしいですよ。
ライフスタイルの問題ですね。ニワトリは、規則正しい生活を送っているから風邪も引かない。それに引きかえ、人間は夜中まで酔いつぶれるまで飲んで、カロリーの高い食事を食べすぎるまで食べている人が結構います。こんな不摂生な生活を繰り返していれば、風邪どころかメタボや生活習慣病になっても不思議ではありませんね。
ところが、そのニワトリも「バタリー飼い」(ケージ飼い)といって、以前、人間が土の上で飼っていたニワトリをケージの中に押し込めて、卵をたくさん産ませるために夜10時ごろまで電気をつけて無理やり食べさせている。こんな飼い方をすれば、ニワトリだって当然おかしくなりますよ。しかも、病気にならないよう抗生物質を混ぜた配合飼料を与えたり、消毒もする。最近の人間も、バタリー飼いのニワトリとたいして変わらなくなってきました。三交代で働く人や深夜、コンクリートのビルの中で働き、夜食を摂っている人も多い。土から離れて生活し不摂生すれば自ずと体は弱くなります。
自然の摂理に反した生活を続けていれば、確かに人間の体はおかしくなると思いますね。それでなくても、最近、人間の体は弱くなってきたように思えてなりません。「戦争」、「貧困」という戦中、戦後の過酷なストレスから解放され、栄養状態も良くなり、国民皆保険で誰でも等しく医療の恩恵を受けられるようになって、生物として生きやすくなった分、抵抗力がなくなって体も弱体化したのではないでしょうか。それに、環境ホルモンやダイオキシンといった環境汚染物質に加え、食品添加物をはじめとする化学物質などの影響で免疫力の低下を招いたこともあるでしょう。
私のところに以前、ニワトリを2羽、捨てにきた人がいました。それも老いて、毛の抜けたおじいちゃん、おばあちゃんのニワトリでした。それを拾って、うちのチャボと一緒に放し飼いにして、飼っていたら、土をよく食べるようになりました。やがて抜けた毛が生えてきて、みるみるうちに元気になり、老いたはずの2羽が仲良くなって卵を産みだしたのにはビックリしました。うちに来る前は、土のないケージで飼われていたのでしょう。人間だって子供は放し飼いの方が元気みたいですよ。裸足で野原をどんどん駆け回らせる。あまり過保護や管理し過ぎたりしないことですね。私も子供や孫をよく畑に連れて行き、農作業を手伝わせました。
私たちが子供のころは、遊びといえば、缶けりや鬼ごっこ、泥んこ遊びなど、空き地や野原を駆けずり回る外遊びがほとんどでした。そこには必ずガキ大将やリーダー役のお姉さんがいて、その統率のもとに近所の子供たちが年齢も関係なく一緒に遊んだものです。この集団での遊びを通し、子供ながらに人間関係を学び、生きる力を養ったものでした。それが今はゲームやテレビ、マンガなど室内の遊びが中心であることに非常に危機感を覚えますね。確かに塾やお稽古ごとで自由時間が少なくなったとはいえ、自然と触れ合う外での遊びが減れば、体力や運動能力の衰退だけでなく社会性や人間力だって育ちません。
人間も雑草のようにたくましく育ってほしいですね。雑草のような人間には思いやりがあり、人間味もある。独創的でリーダーシップを備えている子が多い。何不自由なく過保護に育てられた子供は自己中心的で、独立心や協調性に欠け、依存心が強く、指示がないと行動できない子に育つ傾向がありますね。自然界の動物は、自然の厳しさに鍛えられ、たくましく成長しています。食べすぎることもないし、塩分や砂糖だって摂りません。病になっても医者はいないし、薬もない。ただ、食を断ち、じっと治癒するのを待っているだけです。だから野生動物は、人間が罹る病気になったりしませんね。「糖尿病のイノシシ」「メタボのキツネ」なんて聞いたことありますか、ないでしょう?でも、人間のために育てられた動植物は、科学的、合理的に飼育、栽培されているように見えても、ますます病弱になりつつあります。ペットなどがそのいい例でしょう。やはり、動物もエサが変わると、人間と同じような病気が出てきます。
昔は、イヌの病気といえば、せいぜいノミ、ダニ、狂犬病などでしたが、最近ではむし歯はいうまでもなく、胃潰瘍、糖尿病、がん、アトピー性皮膚炎、歯周病、花粉症…と、人間の病気とまったく変わらない病気が次々現れてきている、と聞きました。これも、食習慣や環境汚染、ストレスなどがペットの体に負荷を与えているのでしょう。自然とかけ離れた生活をしていれば、動物といえども病弱になりますね。
山田さんも、子供のころ、よく動物園に行かれたことがあると思いますが、サルの行動をずっと観察していると、おもしろいですよ。よく見ると、権力をかさに他のサルのエサを強引に奪って食べているのがボス猿なんですね。自ら身体を使おうとしないから足腰が弱って動きも鈍い。その点、若いサルは仲間のエサを奪ってダァーと木に登って逃げ回っている。4つの足をすべて使っているから健康で元気がいい。手足を使わずに口ばかり使う人間は、足腰も弱い。時々、人間もサルのマネをすれば、足腰も強くなり、肩こりや五十肩も、いっぺんに吹っ飛んでしまいますよ。私はよく「医学は自然に学べ」と言っていますが、病気にならないためにはどうしたらよいか、野生動物や自然界にそのヒントがあると思っています。
動物園というところは、単に動物を観察するだけでなく、動物の生態を通していろんなものが見えてきますね。特に自然保護や環境問題を考える絶好の場ではないでしょうか。例えば、氷の上で暮らすホッキョクグマを見れば、地球温暖化で海の氷がとけ、アザラシなどの餌の確保に困る様子が想像できますし、ゴリラやオランウータンを眺めていれば、熱帯林の伐採や森林火災で棲みかを追われている彼らの姿が浮かんでくるでしょう。いずれも人間のエゴによる環境破壊で、動物たちが絶滅の危機に追い込まれている実態が理解できるのではないでしょうか。
その通りです。人間は自然を、地球を「人間中心」に考えているところに誤りがある。人間も自然との共存の中でしか生きる道はないことを知るべきでしょう。植物といえども、自分を取り巻く自然界の生物なくしては単一の植物だけでは育ちません。微生物だっていのちを支える大切な生物なんです。自然はお互いに助け合って生きている。人間も自然あっての人間であり、自然界の一員であることを忘れてはなりません。自然への思いやりこそ、いのちを守ることにつながるんです。医学だってそうですよ。いのちを守っているのは医学や医師だと思っているのは幻想に過ぎません。これからは誰でも自らの健康、いのちを本気で考えなければならない時代といえるでしょう。今日の予防医学や健康管理は、医学の枠の中にとどまっていて、そこには生命観や食物観、自然観といったものは、あまりありませんね。
健康管理は、国民一人ひとりが「病気になりにくい身体をつくる」という予防医学的な考えを持つことがますます重要になってくるでしょうね。偏った食生活や運動不足、ストレスが生み出す生活習慣病が増えていますが、日々の心がけしだいで生活習慣を正すことは可能です。私たちを取り巻く環境はますます複雑化し、大きく変化しています。そんな時代だからこそ「自らの健康は自ら守る」というセルフケアライフの実践が求められてくるのではないでしょうか。
時代は、医学の次元を超えて一人ひとりが自らの生き方を考える時代に入っています。病気にならないよう自ら生命を養う養生の精神を持つことが大切だと思います。