山田英生対談録

予防医学 〜病気にならないために〜

劉 影氏×山田 英生対談

中医学で健康長寿

免疫力を高め老化遅らせる

山田

日本は、2015年には国民の4人に1人が65歳以上という超高齢社会を迎えると言われています。誰しも生涯現役で、最期のときまで元気に生き生きと暮らしたいと思いますよね。私たち人間は一体、いくつぐらいまで生きられるのでしょう。

劉

生物学的には120歳まで生きられることがわかっています。しかし、さまざまなストレスの影響や病気になって多くの人は、70歳、80歳、90歳で人生を終えざるを得ないのが現状です。確かに、日本の女性も長生きするようになって平均寿命は85歳を超えるまでになりました。しかし、寿命は伸びても最期まで健康でいられる人は意外と少なく、何らかの病気を抱えている人が実に多いですね。中医学のめざすアンチエイジングは、誰でも健康で、実りある長寿をまっとうできるようにするのが目的なんです。

山田

ふつう、老化現象というのは、白髪が出たり、シワが増えたり、姿や顔などに出ますが、医学的には、どのような形で老化現象は始まるのでしょうか。

劉

まず免疫力が下がって、なかなか回復しなくなりますね。その結果、風邪をひきやすくなったり、疲れやすくなったり、筋力も低下してきます。さらに、集中力や記憶力も低下するなど、脳の機能も徐々に落ちてきます。また、骨質が劣化して骨粗しょう症になったり、骨折しやすくなる人も出てきますね。精神的には、ホルモンバランスの低下に伴ってイライラや抑うつ症状が出てくるケースも結構、多いです。

山田

なるほど。こうした臓器を含めた全身の機能低下が加齢に伴って進むと更年期障害になるんですね。年齢を重ねるごとに出てくる老化現象の兆候は、未病という形で出てくるんですか。

劉

そうです。だからアンチエイジングに必要な中医学のキーワードは未病なんです。未病を治すことが、老化防止の第一歩といっても過言ではありません。すでに老化のメカニズム、仕組みはわかっているんです。私の研究によれば、免疫力を高めることによってストレスは緩和できるし、また老化のスピードもある程度、遅らせることも可能であることが分かりました。人間、50歳を超えると、眼も、耳も足腰も弱くなり、不眠などさまざまな症状が出てきます。こうした加齢現象に対応するには人間の心と体を、トータルにケアすることが必要になってきます。その点、西洋医学よりも中医学の方が対応しやすいんです。

若さを保つ笑いの効果

山田

免疫力といえば、吉本興業のお笑いを見る前と見た後では、人の免疫力にどんな変化が現れるかを測定したユニークな調査を知りました。それによれば、お笑いを見た人は総体的に免疫の一つであるNK(Natural Killer)細胞が活性化して、免疫力が上がることがわかっているのです。笑うことによって心身がリラックスし、免疫力を高める点で笑いは効果があるのですね。

劉

ありますね。笑うことによって、交感神経の緊張がほぐれ、NK細胞を活性化させるんです。ですから、口先で笑うだけでは、あまり効果はないですよ。心底、お腹の中から笑わなければ意味がありません。少なくとも1日1回、大いに笑いましょう。笑うこと、楽しいこと、おもしろい体験をすれば脳に快感が送られて、免疫力が上がり、若さを保つのにも効果があるんです。昔からよく「恋をするとキレイになる」と言いますよね。心ときめき、幸せな気分になるとNK細胞は活性化し、心身が元気になります。脳にいかに「快感」を与えるかが重要なポイントです。脳の研究は、21世紀のアンチエイジング医学にとって最大の研究分野といってもいいと思います。

山田

逆に怒ってばかりいると、どうなりますか。

劉

例えば、顔面が赤くなり、呼吸が乱れるほどの怒りが長く続けば、自律神経がおかしくなり、血圧も上がります。内臓を傷めることだってありますよ。中国人は気に入らないことがあるとよく怒ります。だから、心臓病と脳出血で亡くなる人が多いと、言われています。その点、日本人は「我慢する」ことが美徳の国民性ですから、耐えることによって免疫力は落ち、ガンの発病につながりやすい、との研究もあります。もちろん、個人、地域によっても異なりますが、日本人、中国人という民族性の違いなんでしょうね。

山田

おもしろい研究ですね。ところで、人生80年の時代になりましたが、長寿によって人間の体は、昔と比べ変わりましたか。

劉

平均寿命がこれだけ伸びても、女性の体の生理機能は、昔も今も変わっていません。中国では、女性の体は7歳ごとに変化するといわれ、中国最古の医学書「黄帝内経」にも記述されています。それによると、大体、14歳で生理が始まり、21歳で女性らしい体ができあがる。28歳から35歳までが女性の体の成熟期で35歳を過ぎると肌が衰えるなど徐々に老化が始まり、更年期へとゆっくり移っていく。49歳で閉経し、個人差はあるものの、50歳前後で更年期を迎える―と書かれています。

進行が緩やか 男性の更年期

山田

「黄帝内経」が編纂されたのは、中国・前漢時代という説もあります。だとすれば、約2000年以上も前から女性の体のリズムがわかっていたことになりますね。驚きました。

劉

「黄帝内経」には男性の更年期についても、触れていますよ。男性の場合は、女性と違い体のリズムは8年周期なんです。同書には、「16歳で腎気が盛んとなり」「56歳で腎気が少なくなり、精もなし。64歳で髪が落ち、歯が去り、腎が衰え、肉体も衰える」と書かれています。腎とは西洋医学でホルモン関連の機能を意味しますから、男性のホルモン減少に伴う更年期は、大体50歳半ばから60代半ばと言ってもいいでしょう。でも男性の場合は、女性に比べ進行ペースも緩やかで、症状の無いケースも多く見られます。女性のように閉経というはっきりした体の変化がない分、更年期障害に気づかない男性も結構います。山田さんも50歳、そろそろ更年期を迎えてもおかしくない年代ですね。

山田

私も、40歳のころから意識し始めました。ストレスのせいか、視力が落ちたり、肩凝りがするようになったのですが、ある時期から急にひどくなり、耳鳴りや眠れないといった症状も出始めました。多忙な仕事による疲労からの不調であると思っていたんですが、今、振り返ると更年期の影響があったのでしょうね。「これではいけない」と思い、まずライフスタイルから変えました。それまで毎晩、深夜12時すぎまで働いていたのを少しずつ仕事の時間を減らし、早く切り上げるなどいろいろ工夫をしました。でも、男性の場合は、女性のように、食べたいものを自分でつくって食べる習慣がありません。出されたものをいただくケースが多いですから、栄養のバランスも、自分の努力というより、奥さんの知恵や工夫によるところが大きいですね。

劉

更年期は男女を問わず、やってくるわけですが、特に女性の場合は、ホルモンの影響が大きいです。卵巣ホルモンのエストロゲンの分泌量は、30歳前後をピークに緩やかに下降線をたどります。その結果、のぼせや冷え、動悸や息切れが起こったり、抑うつ症状も出てきます。今、女性に特に多いのが、うつ症状なんですね。私がこれまで続けてきた30代後半から40代後半の働く女性を対象とした調査でも、独身・既婚を問わずうつ症状が非常に多いのにびっくりしました。原因は疲労から生じた慢性的なストレスなんですね。慢性ストレスによって気の循環が悪くなり、停滞してしまうんです。中医学ではこれを「気滞」といいますが、気滞になると精神的に不安定になり、イライラし、気持ちが落ち込んでうつ病や心身症の原因になりやすいんです。

山田

確かに、心の病を抱える人は多いようですね。厚生労働省の調査でも、従業員1000人以上の企業の80%が心の病を理由に1か月以上、会社を休んだ社員がいることが新聞で報じられていました。当社もグループ全体で1000人以上の社員を抱えていますが、最近、ストレスに弱い人が増えてきたような実感はありますね。特に社会の競争が急に激しくなってきたかといえば、20、30年前と比べ、そうでもない。食生活の乱れとかいくつかの要因も考えられますが、私は、「家庭の力」が弱くなってきたことが背景にあるような気がしてなりませんね。今の家庭はどこも核家族化し、例えば、夫や子どもたちの職場や学校でのストレスを受け止めてあげる家庭の機能が落ちてきたように感じます。元来、家庭というのは、外で受けたストレスを発散させたり、解消する安らぎの場、憩いの場のはずなんですけど、本来の機能が働いているとは思えません。家族の仕事や人間関係などの悩み、苦しみをもう少し家庭で聞いてあげることができれば、多少のストレスには耐えられると思うのですが…。

早めの対応で若返りも可能

劉

まったく同感ですね。家でそばで寄り添い、一日の出来事や自慢話、悩みなどを聞いてあげるだけで、本人はだいぶ救われると思います。親子、夫婦、恋人同士、心地よい人間関係は幸福感の源なんです。よく、更年期を迎えた女性の中には、心身のトラブルがひどいため「辛い。死にたい」などという人もいますが、でも、そんなに思いつめなくても必ず症状を緩和することはできるんです。更年期というのは、体の変化ですから、その変化に合わせてライフスタイルを変えていけばいいんです。例えば、食生活とか運動、入浴法とか心の持ち方とかですね。それもできるだけ早いうちに準備したほうがよいと思います。そうすれば、体に"貯金"ができます。永遠の若さを保つのは無理としても、早めに準備し、上手にケアすれば、実際の年齢よりも5歳〜10歳くらい若返ることは可能でしょう。

山田

早めに対応することは、何事でも大事ですね。子どもの教育や夫婦の関係、企業経営だって、早めに手を打てば、なんとかなります。その点、未病の思想は、健康だけでなく、すべての問題に通じる考え方だと思いますね。ところで、女性の健康でいえば、避けて通れないのが更年期。具体的には何歳くらいから準備を始めればよいのでしょうか。

劉

人生50年のころは、更年期というものはありませんでした。50歳になる前に、多くの人が亡くなっていたからです。しかし、今は50歳過ぎてもあと30年、40年と生きる時代です。女性の更年期も早い人は、40歳くらいから始まる人もいます。できれば30代後半ごろからアンチエイジングを意識した生活に変えていくのが理想ですね。私の経験から言っても30代は、結婚、出産、子育て、仕事と目の回るような忙しさです。ストレスも多いうえに体力も落ちてきます。ですから子育てと平行しながら少しずつ将来設計も考え、30代から健康的なスタイルを確立し、心身のコンディションを整えながら、更年期にそなえたいですね。

山田

そうすれば、更年期にみられがちな不定愁訴や生活習慣病などにそれほど悩まなくてもいいわけですね。

劉
いつまでも美しく輝いていたいのは女性の願い。太極拳で体を動かすのも若返りに効果的だ

いつまでも美しく輝いていたいのは女性の願い。太極拳で体を動かすのも若返りに効果的だ

そうです。それと大事なのは、心の持ち方ですね。30代後半から40代は子どものことや親の介護などでなにかと苦労の多い時期ですが、いつまでも子どもはそばにいるわけではないし、やがては離れて自立していきます。親にしたっていつかは亡くなるでしょう。自分の仕事にしてもいつも同じとは限りません。確かに、家族のことや仕事も大切ですが、自分のために生きることも、とても大事です。特に、40歳を過ぎたら心にゆとりを持って何事も前向きにポジティブに考えることです。今、鈍感力という言葉がよく使われていますでしょう。日々起きるできごとには、くよくよ考えず、少し鈍感なくらいおおらかな気持ちでいるほうがよいと思いますよ。人間の心と体は一つにつながっており、心の平安を保つことは、病気にもなりにくく、老化のスピードダウンにもつながります。

質の良い眠りで抗加齢に挑む

山田

人間の健康は、心と体のバランスの上に成り立っているんですね。

劉

それと睡眠時間をたっぷり取ること。アンチエイジングにとっては、眠ることが一番、大切です。それも、深夜、深く眠るなど、質のよい睡眠をとることですね。眠ることによってストレスは緩和されるし、眠っている間に成長ホルモンが分泌され、老化予防にもつながります。もう一つ大切なのは、仕事や家庭以外の自分の時間を確保すること。スポーツや趣味、ボランティアでもいいし、動物や花、自然との触れ合いなどでもいいでしょう。何か楽しんで打ち込めるものがほしいですね。とにかく、更年期には精神衛生上、心のすき間をつくらないことがとても重要です。

山田

当社には全国に300万人を超えるお客さまがおられます。しかも、その80%が女性なんですね。その中には、お年をめされた方もたくさんいらっしゃいます。その点からも「女性の健康」というのは、当社にとっては非常に重要なテーマなんです。いつまでも若々しく、健やかに充実した日々を送っていただくために全社一丸になって、その商品の研究、開発に取り組み、健康をサポートしていきたいと考えています。

(企画制作、写真提供:毎日新聞社広告局)

  • 鏡野便り:山田養蜂場公式Blog
  • みつばち広場
  • 店舗案内
  • 法人様お取引窓口
  • みつばち農園