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山田英生対談録

父親がいかに家庭教育に参加できるかが問われている

尾木 直樹氏×山田 英生対談

尾木 直樹氏と山田 英生

教育の荒廃が叫ばれるいま、父親の存在こそが重要。
企業戦士として外で働く父親がいかに家庭教育に参加できるかが、
問われているのではないでしょうか。

家庭教育に必要な父権を取り戻す取り組みが必要です。

山田

子どもと教育の問題は年を追うごとに深刻化してきているように思えてなりません。つい最近も少年たちの凶悪犯罪が報じられましたが、これらは一部の特別な子どもの問題ではなく、すべての子どもたちが置かれている状況を象徴的に映し出しているのではないでしょうか。

尾木

そうなんですね。続発する少年の凶悪犯罪に対して、その他大勢のフツーの子が「気持ちはわかる」と共感を示しています。みんな事件を起こした子と同じ苦悩を抱えているのです。

山田

子どもたちの行動を見ていると、その向こうに、物質的な豊かさや快適さばかりを追求していくあまり、どんどん利己的になってゆく大人社会が透けて見えてくるような気がします。

尾木

これまで子どもたちの問題は、その原因を学校教育に求めがちでしたが、むしろすべての子どもの教育の原点ともいうべき家庭教育も見直す必要があるのではないかということをあらためて認識してきました。

山田

これまで家庭教育といえば、母親の役割がクローズアップされていました。わが家でも同様です。でも、私はむしろ父親の存在をもう一度意識し直す必要があるのではないかと思います。いくら外で頑張っていても、家庭での父親の存在意義がなくなっては、父親にとっても子どもにとっても幸せな状況とは言えないでしょう。

尾木

かつて強い父権が存在し、少年非行を防いだり、社会モラルを教えたりしていたのに、いまの父親はふがいないと嘆かれます。でも、父親は企業戦士として外で頑張ってきたのに、今日ではリストラなど厳しい状況にさらされています。父親の意識改革も必要ですが、むしろ社会全体で父親が父親らしい役割を発揮できるような取り組みが必要な時代に入ってきていると思います。

子供と信頼関係を築かなければ、お父さんは子供を叱れません。

山田

尾木さんがお書きになった『お父さんが叱れない理由(わけ)』という本を読んで、私も身につまされました。

尾木

サラリーマンのお父さんは、働く姿を子どもに見せられない。だから子どもは父親を尊敬できないし、尊敬しようという意志も生まれない。するとお父さんは子どもとの関係をよくしたいから友達親子になってしまい、子どもを叱ることができないんです。叱るためには濃密な親子関係、信頼関係が必要なのです。私は、お父さんたちに「家事労働を担当したりして、もう少し家庭に参加しよう」と提案しました。ちなみに働いている母親の一日の平均家事労働は約4時間。これに対して父親は平均18分しかありません。しかし、父親を一方的に責めるわけにはいきませんね。日本のお父さんの帰宅時刻は夜10時以降が6割を超えていて、家事参加などできないのが状況です。やはり社会構造的な改革により、企業がもっと早くお父さんを家に帰さなければ、お父さんも叱れない。親子関係で叱れなければ、ひいては家族も国家も間違いを正せなくなってしまいます。この辺で企業と子どもの関係、企業と家庭のあり方など、いろいろな関係性をゆっくり見つめ直してみてはどうでしょうか。

山田

まさにおっしゃる通りですね。私は子どもの頃、父親によく叱られましたが、家族みんなで養蜂という農業に従事していたおかげで、人間関係が壊れることもありませんでした。しかし、会社組織になった今、自分自身は子どもをなかなか叱れない。あまり強く叱ると、そこで人間関係が切れてしまうのではないかと心配になります。ここ数年、そのことを深く考えるようになり、努めて子どもとの時間をつくるように意識しています。日曜日には私が食事を作ったり、できるだけ家事にも参加したりしています。

尾木

お父さんが子どもと同じ時間と空間を所有しないかぎり、叱ることは大変むずかしいのです。じつは私も夫婦共働きなので、掃除、洗濯などほとんどの家事に参加しています。「お父さんがつくったごはんはおいしい」「お風呂がピカピカになってる」と言われると嬉しいですね。もちろん「お皿の汚れが落ちてない」なんて文句も言われますが。でも、その会話が大切なんです。もし私が何もしなかったら、すれ違いのまま終わるでしょう。尊敬されなくても、文句を言われても、家族と関係していることが楽しいんですよ。 企業活動の中で子供と接点を持つことができるはずです。

尾木

この4月、学校教育が大きく変わります。とくに公立の小・中・高校が5日制になり、子どもが家庭や地域とふれあう時間が長くなります

山田

私は休日よりむしろ平日に、いかに大人と子どもが接点を持てるかが大切だと考えています。「企業人のお父さん」がもう一度、人間性を取り戻すためには、企業活動の中で子どもと接点を持つことを考えてもいいのではないでしょうか。一日の労働時間を減らしてゆとりを持たせ、子どもたちが会社に入ってくるようなシステムづくりに取り組みたいのです。

尾木

企業活動の中に子どもたちが入ってこられるようにするためには、働き手である大人の方がゆとりを持つべきだとお考えなんですね。

山田

そうです。経済社会は経営効率を優先しがちです。生産性や労働効率を上げることばかりを考え、余分なものをどんどん排除しています。しかし、じつは余分と思っていることにこそ重要な教育効果があるのではないでしょうか。

尾木

戦後の歴史を振り返ると、1975年がひとつのターニングポイントだと言われます。'75年から第三次産業が労働人口の51%、つまり過半数を超えました。それまで多くの父親は農業や自営業に就き、親が仕事をすること、子育てをすること、家族が生きることが、全部一体だったわけです。子どもには、家庭内労働や家事の手伝いをして家族を支えているという実感がありました。だから父親や母親が子育てのために「何かしよう」と考えなくても、一生懸命働いてさえいれば、子どもは育っていくという基本的な社会構造があったと思うのです。ところが、親がサラリーマンになって働き場所も会社へ移ってしまい、お父さんはたとえ夜10時まで懸命に働いても、子育てには何の影響力も持てなくなってしまいました。もし、山田社長の言われるように、企業の中に子どもが入っていければ、ある意味で昔の家族労働のよい点を取り戻せますね。

企業は発想を変えることで、大切なことを得られると思います。

山田

企業はこれまでの利益最優先の発想を変えることで、子どもとの接点をつくることを考えてもいいと思うのです。商品をつくったりサービスを提供したりするときにも、子どもが企業内にいれば、もっと子どもの目線を大切にするようになるでしょう。これまでは、たとえ子どものことを考えた商品開発といっても、それは子どもを消費者としてしかとらえていませんでした。これからは、商品やサービスを社会に提供することが子どもにどういう意味を持つのかを考えるようになってもいいはずです。例えば、テレビゲームをつくる会社はもっと子どもの教育を考えてソフトを開発するだろうし、コンビニエンスストアは子どもたちの目線の高さに成人向け雑誌を平気で並べたりしなくなるのではと思うのです。

尾木

そうですね。もう少し配慮してほしい問題が、利益至上主義の中でうやむやにされがちだったわけですからね。では、子どもを企業内に受け入れるために、具体的にはどういうことをお考えなんでしょう。

山田

子どもが意欲的に取り組めるような仕事にチャレンジさせ、その達成感を味わってほしいですね。もちろんその仕事がちゃんと成り立つように、大人がサポートしなくてはいけませんが。

尾木

「ごっこ遊び」ではなく、本当に一緒に働くということですね。子どもにとって、商品が売れたとき、お客さんから「ありがとう」と言われたときの喜びは、非常に大きいでしょうね。社会で認められる、自分もやれるという自信がつきます。

山田

兵庫県では子どもたちを社会参加させる「トライやる・ウィーク」という試みを成功させていますが、大変面白い取り組みだと思いますね。当社が、子どもたちのために実施している『エコスクール』や『みつばち教室』、あるいは地元の方々に参加してもらって社屋の周囲にふるさとの森をつくる植樹活動などは、日常の企業活動とは違うレベルです。私はさらに一歩踏み込んで、子どもたちを日常の企業活動の中に巻き込みたいと考えているのです。

尾木

これまでの企業のメセナ活動は、根底に会社の利益があるために、経営状況が厳しくなると撤退しがちでした。おっしゃるように企業が利益とは関係なく子どもたちと接点を持とうと考えるようになれば、世の中が相当変化してきますよね。

山田

企業と子どもの関係とは、じつは大人社会と子どもの関係づくりだと思うのです。

尾木

私は学校5日制になって子どもも週休2日になれば、働く親が企業から離れて子どもとの接点がたくさんできると思っていたのですが、日本が企業と子どもの関係を意識できる国になればさらにいいでしょうね。子どもたちも、企業で働くお父さんお母さん、あるいは地域の人々など、大人社会を具体的に実感できます。自分はどういう生き方をするのかというキャリアのイメージも浮かびやすいでしょう。

山田

企業に新卒で入社すると、例えば半年間研修して、3年間は新人として過ごすといったように、ある程度の期間は会社に助けられます。それでも企業活動は成立するわけです。それなら子どもが1カ月のうちに何日間か企業へ入ってきても、十分に対応できるはずです。企業の側が発想を変えて、受け入れ体制さえ整備すればいいのです。そのために企業が失うものがあるとしても、おそらく得られるものの方が大きく、心配はないと思います。私は農を基本とする企業の代表として、農業社会が持っていた子育てのための知恵をもっと世の中に活かせないかと考えています。本日のお話は、そのためにもいい参考になりました。どうもありがとうございました。

尾木 直樹さん
(教育評論家、臨床教育研究所「虹」所長)
1947年生まれ。早稲田大学卒業後、海城高校、東京都公立中学校教師として、22年間ユニークな教育実践を展開。現在は全国での講演、TV出演、新聞雑誌への執筆活動のほか、日本教師教育学会常任理事、「放送と青少年に関する委員会」(NHK、民放連)副委員長。主な著書に『子どもの危機をどう見るか』(岩波新書)、『学校は再生できるか』『「学級崩壊」をどう見るか』『「学力低下」をどう見るか』(以上NHKブックス)ほか
尾木 直樹さん
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