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石 弘之氏×山田 英生対談
女性が生涯に産む子供の数である合計特殊出生率が、日本ではついに1.25人まで下がりましたねえ。同時に災害以外で、初めて人口が減ることになりました。今世紀半ばには、日本の人口は1億人を割り込んで、世紀末には6000万人になると予想されています。日本としては、経験したことのない人口減少という難題が突きつけられているわけです。
それは国家としても深刻な問題ですね。若い人たちが子育ての将来に不安を感じる社会になっているのでしょうか。そういえば、最近、海外の国際病院に行く機会があったのですが、来ている患者の国柄の違いに驚きました。欧米人は、たいていは患者が恋人や夫婦と一緒に来ていて、アジアの人たちも大半が家族みんなで付き添って来ていました。患者が一人ぼっちなのは、日本人でした。経済発展の豊かさの陰で、我々の家族の絆は、いつの間にか薄くなりすぎているのではないでしょうか。
世界では、先進地域の25カ国でも人口が減りはじめました。このままいくと、2050年には51カ国で人口が減ると国連は予測しているのです。とくに人口減少が目立つのは、ロシアなど旧ソ連・東欧圏、イタリアなどの南欧ですね。
日本と旧ソ連・東欧圏に共通するものは何なのでしょうか。もしも急激な経済の発展が、旧来の文化や価値観を破壊し、未来に希望が持てない社会となっているのだとすると、手放しで発展を喜べないですね。
もうひとつの視点として、少子化は本当にマイナスだけなのかという議論がありますね。地球全体から見ると、日本人の1人当たりの資源消費量は、アフリカ人の数十人分はありますから、日本人が1人減ると貧しい国々の多くの人々が助かるのかもしれない。日本列島は3000万〜5000万人くらいが適正なのではないか、という説もあります。
日本の国土の資源から考えるとそうなのでしょうね。
でも、あまりに急激に減ると、社会システムが持たなくなる危険がありますね。年金制度とか生命保険とか。
仕事柄、海外に行く機会があるのですが、海外から日本経済の仕組みを見ると、いかに多くの国々の資源や人々の犠牲の上に、日本の繁栄が成り立っているのかがよく分かります。しかし、地球に優しい5000万人で成り立つ日本というものを実現しようとすると、乗り越えるハードルもまた、高いでしょうね。
一方で、世界人口は今年に入って65億人に達し、開発途上地域では相変わらず人口増加が止まらないようです。サハラ以南のアフリカとか南アジアでは人口爆発が続いています。世界人口の分布が過疎と過密で、極端なアンバランス状態になって、深刻な問題になっていますよね。よりよい生活を求めて、人口の多いところから少ないところへ、収入や雇用の少ないところから多いところへ流れるのは当然でしょう。いま世界では、空前の大移動がはじまっているのです。他国生まれで外国に住む人は2億人を超えて、過去30年で2.4倍にもなりました。昨年来フランス、イギリスなどで移民を巡るトラブルが起きているのも、人口のアンバランスが背景にあります。
なるほど、昨年のトラブルにはそのような背景があったのですね。
94年にルワンダで内戦がありました。フツ族とツチ族が闘って、100万人を超える死者が出ました。フツ族は農耕民でツチ族は放牧民。人口が増えて手狭になった農耕民が放牧地に出ていって激しくやり合ったのがあの悲惨な内戦の原因の一つになっているのです。メキシコも人口圧力が高いから米国へと流れ込んでいく。米国で働けば1日の収入で1カ月分、食べられますから。アジアと日本の関係も同じでしょう。
そうだったのですか。日本は、鉱物や木材だけでなく、食糧までも海外に60%も頼っているのに、移民の問題となると、受け入れませんが、本当にこれでいいのでしょうか。私は世話になっている海外諸国に対して、感謝の視点が欠けているような気がするのですが・・・。
日本国内にいる外国人は、不幸せかもしれませんねえ。たとえばアパートを探すのも、一番早く見つかるのが白人の女性で、次がアジア人の女性。もっとも難しいのが黒人男性といわれます。
今後、日本の労働力不足はどのように解決すべきなのでしょうね。他の先進国のように移民を受け入れるとなると、それ相応の国際感覚が日本人にも求められるのではないでしょうか。例えば、すでに一部の国民の間には、「外国人イコール犯罪の増加」という見方が存在するような気がします。
学校で必要なのは国際化教育だという意見もあるのですが、教育に全部、責任を負わせるのも酷かもしれませんねえ。一般企業でも、採用したことによって国際化につながるとか、彼らが帰国して祖国に技術を持ち帰る、という発想もあまり聞きません。実際には彼らの賃金が安いから使っている場合がほとんどでしょう。
我々が今までのような豊かな生活を続けたいならば、受け入れるべきでしょう。ですが、社会不安が増大するかもしれません。そのためには様々な制度の整備も必要になってきますね。
数多くの移民を受け入れた国、たとえばフランス、イギリス、オーストラリア、米国などで、昨年から今年にかけて移民がらみの大きな暴動やデモが起きているのですよ。昨年のフランスの焼き打ち事件では、暴動の中心になったのが失業中や3K職場の移民が多かった。フランスは植民地だった北アフリカから、大量の移民を受け入れた。ところが、景気のいいときは歓迎されても、不景気になったら排斥されます。アメリカでは9.11の同時多発テロ以後、不法移民を排除せよ、という声が強くて法的な規制を強化しようとしている。すると、すでに国内にいるヒスパニック系が反発する。アメリカでは、さまざまな人種の移民が溶け合って「シチュー鍋」となるはずが、現実には「サラダボウル」で混ざり合ったままで、溶けるまでには至っていない。あれだけ移民国家でありながら、人種の壁は厚かった。
なるほど。しかし、そういう意味では、異文化や異民族と混在した生活に慣れていない日本人の方が、もっと移民に対する抵抗が大きいかもしれませんね。この日本で、将来的に移民の問題は発生してくるのでしょうか。
フランスでは移民を自国民に同化させる政策が成功したと自慢していたのが、今回の暴動でうまくいっていなかったことをさらけ出してしまったのですよ。移民を「外国人」として扱ってきたイギリスでは、移民二世のテロが起きています。では日本はどうするか。2000年に比べて、2030年は2割くらい労働者が不足します。それを補うためには1300万人の外国人労働者が必要という試算もあるのです。
労働者を受け入れずにやっていこうとしたら、その不足した労働力を海外との協力で補ってゆくなどの、よほどしっかりした政策を持たなければなりませんね。
移民や外国人労働者は、立場や景気によって、邪魔者にされたり人手不足の救世主になったりします。不景気になったときに政治的にスケープゴートにされて、排斥されることも珍しくありません。
日本で2030年に、2割もの労働力が不足するとなると、国内企業は労働力を海外に依存しなければなりません。そうなれば、海外に進出する企業と進出できずに国内で労働力を調達しなければならない企業とに分かれるでしょう。移民は受け入れずに、海外への日本企業の進出を支援するのか、それとも移民を受け入れて、国内の環境や制度を整備するのか、先見性のある長期的展望に基づいた政策を期待したいですね。いずれにしても無策で何の対応もしなければ、大変なことになるような気がします。
安い労働力は欲しいが、一方で最近の欧米の暴動やデモをみていると、同じトラブルには巻き込まれたくない。女性の進出やロボットの導入で人手不足を乗り切れるのか、それとも日本人の意識が変わって受け入れた外国人とうまくやっていけるのか。それは「経済大国」の道を突っ走るのか、「普通の国」になるのか、の選択でもあります。
本当に難しい問題ですが、真剣に取り組む時期は来ていると思いますね。やはり早く国がそこまで見越して対策を練らなければダメでしょう。こうして議論しているうちにも、労働人口は刻々と減り続けています。