山田英生対談録

予防医学 〜病気にならないために〜

安保 徹氏×山田 英生対談

人に優しい医療へ

無理を重ねれば低体温で便秘も

山田

安保先生は、「白血球の自律神経支配の法則」の発見(臨床医・福田稔先生との共同研究)によって自律神経の乱れが免疫力の低下を招き、病気を発生させる原因であることを解明されました。病気を予防するにも、病気を治すにも免疫力を高めることが非常に重要であることがよく分かりました。実は当社にもこの免疫について専門的な研究をする会社として「免疫分析研究センター」を所有していますが、自分の免疫が高いか低いかは、外見を見ても分かりますか。

安保

わかりますね。例えば、無理している人は、血管の収縮がどんどん進んで、血流障害が起き、全体的にやつれ、顔色も黒ずんで、表情がさえません。反対にいかにもキビキビして仕事ができそうな「やり手」の印象を与える人が、どこの会社にもいますよね。こうした人は交感神経優位で活動的、脈拍も多く、血圧も血糖値も高めで、あるところまではハツラツとした感じがします。しかし、こういう人でも深夜まで働くなど無理がたたると、今度は血管の収縮で心臓血管系に負担がかかり、やつれて病気になるケースも結構あります。よく狭心症になったり、不整脈が出たり、くも膜下出血で倒れるモーレツサラリーマンがいますよね。あの人たちがこのタイプなんです。

山田

確かに、そういう人たちを時々見かけますね。元気で人一倍精力的に仕事をこなしてきた人が、ある時から急にやつれが目立ってきたら、その時は、危ないサインなんですね。

安保

そうです。もっとわかりやすいのが、体温です。私たちの体温はワキの下で測って普通、36・5度。病気の人の場合は、36度以下の低体温になりがちです。体温が低いのは、普段から血流障害がある証拠。どこかで無理な生き方をして、病気になったのでしょうね。それと便をチェックするのも一つの方法。消化管活動は副交感神経支配なので、無理をした人たちは、便秘がちになります。便秘にならなくても、食べたものは腸の中で腐敗してくるため便は黒くなって、ニオイもきつくなります。

山田

自分でも免疫の状態がチェックできるんですね。それでは低下した免疫力を高めるには、どんな方法がありますか。

自律神経の乱れ正常に戻す

安保

その前に、なぜ病気になるのかその仕組みを知ることが大事です。それが分かれば病気を治す方法も自ずと分かってきます。働き過ぎや、心の悩み、薬の長期服用などによって乱れた自律神経を正常な働きに戻せばいいんです。けして難しいことではありません。まず「働き過ぎていないか」、「深刻な悩みを抱えていないか」などストレスの元を探し、環境を変えることが大切です。例えば、折り合いが悪く、いつも喧嘩ばかりしている夫婦なら、「いがみ合っていたら、いつかは大病する」と考えれば、悩み過ぎにブレーキがかかるでしょう。

山田

かかりますね。

安保

それに、薬を常用している人は、まず量を減らし、できればやめることを勧めたいですね。特に、お年寄りは、病院に行くと何種類もの薬を山のように渡されますが、70歳を過ぎた体力の衰えたお年寄りの体にとって負担をかけない薬は、ほとんどないと私は思っています。

山田

そうでしょうね。当社のお客様の中にも比較的年配の方がたくさんおられます。皆さん、病弱の方ばかりかといえば、そうではありません。むしろ、健康な方のほうが多いくらいで、「これからの老後を元気に過ごしていきたい」と考えてローヤルゼリーやプロポリスなどの健康食品をお買い求めになっておられるようです。

安保

その人たちも人一倍、健康に気を遣っているのでしょう。今、日本では平均寿命が延びて、長生きされる方が格段に増えていますが、こういう人はどちらかといえば、あまり医療機関にかかっていない人が多く、反対に医療に頼り過ぎている人のほうが途中で破綻し、病気を悪化させているケースが多いような気がしますね。やはり薬だけに頼らず、生き方を変えたり、免疫力を高める生活習慣を続けるほうがずっといいと思いますね。

山田

病気を治すには食事も大切な要素になるわけですね。

安保

言うまでもなく大切です。口から肛門にいたる消化管は、副交感神経の支配下にあるため、食べ物を摂取して消化管を動かせば、最も手っ取り早く副交感神経を刺激することができます。中でも食物繊維の豊富な食べ物を積極的に取るよう心がけてほしいですね。なぜかと言えば食物繊維は腸をよく刺激し、腸のまわりのリンパ球を増やして免疫力を高めてくれるのです。また、食物繊維をたっぷり取れば、腸内の細菌が繁殖できる環境が整うので、乳酸菌やビフィズス菌が増えて腸内を酸性に保ってくれます。そうすると、腸の中で腐敗が起こらず、いい便が出るようになり、便通は一段とよくなりますよ。

山田

具体的には、どんな物を食べたらよいですか。

食事はゆっくり水分もたっぷり

安保

主食なら未精白の玄米ですね。食物繊維が多いだけでなく、すべての栄養素が入っているため、過不足なく栄養が補給できます。でも玄米は、硬くて消化しにくいので腸の弱い人には、ちょっときついかもしれません。そういう人は、白米に五穀米など未精白の穀物を混ぜてもよいと思います。あとは、野菜、海藻、小魚、キノコなどを積極的に取ることですね。タンパク質の中では、肉は腐敗しやすく、腸内環境を壊しやすいので、本当は大豆や魚でタンパク質を取ったほうがよいでしょう。しかし、寒冷地に住むヨーロッパの人たちがあの寒さの中で生き延びることができたのも肉の力だったかもしれません。だから毎日、肉を食べるのはどうかと思いますが、週に1、2回くらいなら構いません。私も今、可能な限り玄米や野菜を中心に時々肉もいただく食生活を心がけていますが、お陰さまで体調はすごくいいですよ。

山田

私も最近は、年齢のせいでしょうか、洋食よりも和食の方が口に合うようになってきました。納豆などの発酵食品やモズクなどの海藻をできるだけ取り、ヨーグルトにハチミツをかけて食べています。肉は以前と比べ食べたいと思わなくなりました。

安保

それは健康的ですね。味噌、納豆などの発酵食品は、免疫力を高めるのには最適だし、いずれにせよ、バランスのとれた食事をぜひ心がけてほしいですね。また水分もたっぷり取ってください。それと、食事はゆっくり味わって食べるようにしたいですね。よく噛んで食べることは、副交感神経を刺激し、免疫力を高めることにつながります。早食いをやめてゆっくり食べれば、少量でお腹がいっぱいになるし、肥満を防ぐ点からも意味があります。

通勤時間使って運動量を確保

山田

私も、以前はどちらかといえば急いで食事をし、終わればまた、すぐ仕事に取り掛かるタイプでした。体によくありませんね。また、スポーツや散歩など体を動かすことが免疫力を高めるのによいと言われていますが。 バランスよい食事、適度な運動、じっくり入浴。 生活革命で免疫力アップ

安保

そうですね。人間の体は筋肉を使うと発熱し、体温が上がって血流も代謝もよくなるんです。逆に使わなければ発熱は起こらず、低体温になって血流障害を招き、病気にもなりやすい。だから病気を治したいのであれば、毎日少しずつでも運動する習慣を身につけるのも一つの方法です。それも、体がポカポカして汗ばむ程度の軽い運動で十分です。手軽だし、副交感神経を刺激して血流をよくしてくれます。例えば、朝、ちょっと早起きして散歩したり、ラジオ体操をするのもいいでしょう。

山田

昔は、一家の大黒柱の男性にとって田畑での農作業や山林での仕事などは大変な重労働でした。女性にしても夫の農作業を手伝いながら育児、炊事、洗濯などの家事で、いつもこまめに動いていました。私の父も朝早くから晩まで、養蜂や田畑の仕事に明け暮れていたし、母も父の養蜂を手伝う傍ら忙しく家事をこなしていたのを子ども心に覚えています。だから昔の人たちには運動不足なんてありませんでしたね。しかし、今は農作業はすべて機械がやってくれるし、家事も最新の電化製品がそろって大変楽になりました。会社や役所でもIT化が進み、その分パソコン相手のデスク ワークの仕事が増えました。当然、筋肉も使わなくなり、運動不足に陥る人が多いですよね。

安保

実際に運動は必要ですが、仕事に追われ、毎晩遅くまで長時間労働をしている人が働き過ぎの状態をそのままにして運動してもかえって体にはよくありません。だから運動をするにしても、まず自分の健康状態と相談し、体調に合わせた適度な運動をすることが大切です。忙しい人は、まず休養して少しずつ運動を始めるといいでしょう。

山田

そう思いますね。しかし、現代人は多忙です。子どもは週に何日もお稽古ごとや塾に通い、サラリーマンは夜遅くまで働いて運動する時間がありません。運動不足を解消するよい方法はありませんか。

安保

そうですね。忙しいサラリーマンがまとまった運動の時間を確保をするのは難しいかもしれません。でも、ちょっと工夫すれば、日常生活の中で体を動かすことは可能ですよ。例えば、通勤時間を利用するのも一つの手です。 ちょっと早起きして、一つ先の駅まで歩いたり、一つ手前の駅で降りて歩く。 また駅の階段ではエスカレーターを使わずに必ず階段を利用し、できるだけ速足で歩くように心がける。これだけでも運動量は確実に増えますね。

山田

要は、工夫しだいですね。

温泉での湯治生活の知恵

安保

それと、入浴も効果があります。「無理する、楽する」生き方で陥るのが低体温でしょう。だからお風呂にじっくり浸かって、体を温め、血の流れをよくすれば免疫力も高まります。特に病気や低体温の人、お年寄りは、38〜39度くらいの、ややぬるめのお湯にみぞおちから下をつける半身浴を40分以上、続ければ体も温まります。働き盛りの人や健康な人は半身浴よりも全身浴の方が向いていますね。40〜41度くらいのお湯に10分以上、じっくり浸かれば、疲労感も消えて、リラックスできます。シャワーだけだと、入浴効果は期待できませんね。日本では昔から冬になると収穫を終えた農家の人たちが湯治場に行って、温泉に浸かる習慣があったでしょう。温泉にはいろいろな成分が含まれていて、お湯に浸かることで溜まった疲れを癒し病気を予防していたんですね。

山田

長い経験に基づく生活の知恵だったんですね。話は変わりますが、先生も30代、40代の頃は、研究に明け暮れ、かなり無理をされた、と伺っていますが…。

安保

そういう時期もありましたね。でも、私の場合は、自分で言うのも変ですが、頑張り屋である一方、のんびりした性格も併せ持っていました。だから、極限までくると、「もう、やってられん」と開き直ることもできました。でも、働き過ぎの生活を完全に変えたのは、やはり「白血球の自律神経支配の法則」によって病気の成り立ちがわかってからですね。それと、病気の原因や治す方法を世の中の人たちに説いている本人が病気になったら、かっこ悪いでしょう。だから健康には人一倍気をつけるようになりました。まず夜遅くまで働いていたのを、早く切り上げ、休みもきちんと取るようにし、それまでの働き過ぎの生き方をがらっと変えたのです。

山田

何歳の時でしたか。

安保

54歳の時でした。誰でも50代を迎えたら、それまでの人生を振り返ることも必要かも知れませんね。山田さんは今年50歳を迎えられたそうですが、ここまで会社の業績を伸ばされ、社会貢献活動などでも多くの成果を上げてこられたのは、立派です。しかし、このまま30代、40代のころと同じように突っ走っては、体が持ちませんよ。ちょっと体調がおかしいと思ったら、早めに仕事を切り上げるなど自分の体をいたわることも大事です。

山田

なるほど、ありがとうございます。私もこれからは先生のおっしゃるように、仕事も人生も「7割主義」をモットーにしていきます。ところで、最後に今年から団塊世代の定年退職が始まりました。これまで働き詰め、会社一筋に生きてきた人たちが会社を離れ、仕事から解放されるわけですが、健康な老後を送るためには、どんな点に留意したら良いかアドバイスをお願いします。

安保

定年によって完全に仕事から解放される人も、仕事の量が半分になる人も、体はラクになるから健康になれる願ってもないチャンスです。せっかく長生きしても、ぼけたり、寝たきりになっては意味がありません。人間の体も脳の働きも使わないと衰えてきます。散歩したり、運動して体の機能を維持するとともに、何事にも好奇心を持って脳の働きを維持するよう努めてほしいですね。それと定年退職を機に、ぜひ薬に頼らない生き方に挑戦してみてください。そうすれば、日本には必ず世界の模範となるような健康長寿の社会がやってくると思います。

山田

よくわかりました。今回のお話、大変にありがとうございました。

白血球の自律神経支配の法則
自律神経は白血球の数や働きと密接に関連し、自律神経のうち交感神経が緊張すれば、顆粒球が増加し、副交感神経が優位になればリンパ球が増えるというメカニズムを1996年、安保さんが臨床医の福田稔さんとの共同研究で発見した。福田・安保理論とも呼ばれる。この理論によって、自律神経の乱れが免疫力の低下を招き、病気の原因であることを解明した。つまり白血球の中で、顆粒球の割合が54〜60%、リンパ球が35〜41%の範囲に保たれている時は自律神経はバランスよく働き、病気も免疫力で十分、撃退できる。しかし、働きすぎ、心の悩み、薬の長期使用などのストレスが加わると、交感神経が緊張し、顆粒球が増え、リンパ球が減って免疫力が低下し、いろんな病気が発症するという。

(企画制作、写真提供:毎日新聞社広告局)

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