山田英生対談録

予防医学 〜病気にならないために〜

安保 徹氏×山田 英生対談

免疫力でガンに挑む

免疫力多ければガン細胞を撃退

山田

現在、ガンが死亡原因の約30%を占め、心筋梗塞、脳卒中を抜いて3大死因のトップになりました。なぜガンはこんなに増えているのでしょうか。

安保

やはり国が豊かになり、日本人の衣食住が満たされたのに加え、重労働からも解放されて、長生きできるようになったことが背景にあるのでしょう。ガンになる確率は年齢とともに高くなりますが、日本人が長生きするようになって、50代以上のガン年齢に達する人が増えてきたことが大きな要因ですね。

山田

一般的にはガンはまだ怖い病気で、治りにくいと見られています。先生の免疫学の立場からは、ガンはどんな病気で、なぜ発症するのでしょうか。

安保

ガンは無理を重ねたり、悩んだり、極限まで体に負担をかけすぎて起こる病気といえます。その証拠に多くの人が働き盛りでガンで倒れているでしょう。皆さん、まじめで責任感が強く、頑張り屋さんばかり。女性では心の悩みや苦しみで抑圧された人が多い。例えば、仕事を持っている女性は、勤務が終わって帰宅すれば家事が待ち受けていますよね。しかも、親が病気で倒れれば、自分の親だけでなく、夫の親も介護しなければなりません。日常生活の中に重労働の危険が常に待ち構えているんです。このように、ガンは強いストレスが引き金になって起きる病気なんです。実際、ガンの患者さんに聞いても、「これまでずっと働きづめの生活を続けてきた」「姑の介護などで大変つらい目にあった」などと答えています。

山田

ガンは、タバコや食品添加物、排気ガスなどの外的な要因の影響よりも心の悩みなど内的な要因の影響の方が大きいわけですね。

安保

そう思いますね。私たちの体内では、毎日たくさんのガン細胞が生まれていますが、免疫力が十分あれば、白血球の中のリンパ球がガン細胞を攻撃し、その芽をこまめに摘み取ってくれるからガンにはなりません。ところが、働きすぎや心の悩みを抱えたり、薬を長期間服用したりすると、交感神経が緊張し、顆粒球が増え、その分リンパ球が減って免疫力が低下し、発ガンするわけです。しかし、自律神経のバランスを整えて、免疫力を高めていけば、ガンはけして不治の病ではなく、自分の力で治せる病気です。今、ガンを克服してきた元患者さんたちでつくる「患者の会」が全国に広がっていますが、この中には進行ガンや再発ガンを自ら治した人、中には末期ガンからよみがえった人も参加しています。こうした人たちが自分たちの闘病経験をもとに、ガンと闘っている人たちを励まし、支えているんですね。その一方で、新たに開発された新タイプの抗ガン剤に依存し、薬の力で治癒を目指す流れもあります。

まず生き方の無理に気づく

山田

もし不幸にしてガンになってしまったら、どうしたらよいですか。

安保

まず、これまで自分が歩んできた人生を振り返り、生き方の無理に気づくことですね。気づけば、「これからは生き方を変えよう」、「体にいいことをしよう」、という方向に向かいます。例えば、仕事の時間を減らし、睡眠時間を増やす、毎晩じっくり入浴するなど、できることから生活習慣を変えていけばよいのではないでしょうか。一方、生き方の無理に気づかない人は、なぜガンになったか原因がわからず、医師に勧められた通りに手術、放射線治療、抗ガン剤投与の3大療法の流れに入っていくんですね。

山田

確かに免疫力に基づいた自然治癒力でガンが治ればよいのですが、その一方で「ガンは怖い、再発したらどうしよう」などと考える人もいます。依然、3大療法に頼る人も多いですよね。なぜ3大療法は問題なのでしょうか。

安保

辛い目にあった人が3大療法を受けることによって、もっと辛い目にあうことになると思います。その結果、生きる力が失われ、免疫力が低下するなど、あまりよいことはありませんね。どの治療も交感神経を緊張させ体力を消耗させて、ガンと闘うリンパ球を奪ってしまう恐れがあります。

山田

ガンを治すために受けたはずの治療なのに、それでは意味がないのではありませんか?

安保

中でも放射線照射と抗ガン剤の投与は、ガン細胞だけでなく正常な細胞にもダメージを与え、免疫力を低下させてしまう心配もあります。特に放射線治療は、治療を途中で止めないと免疫力は回復せず、体調の不調がずっと続く恐れもあります。その点、抗ガン剤は、投与した際は髪が抜けたり、食欲が落ちるなどの副作用はありますが、放射線ほどの害はなく、途中で止めればまた元気は回復してきます。手術は、3大療法の中ではもっとも影響は少ないのですが、お年寄りの大手術は、できれば避けたほうがよいと思いますね。体力が落ちているうえに手術によって生きる力自体が奪われてしまいますから。

山田

なるほど。考えさせられますね。

安保

いずれにせよ、健康な人に比べ心身の弱っているガン患者さんに3大療法は、あまり勧められませんね。それよりも、体を温めるとか、食事の偏りを改善するとか、血流を増やすとか、サプリメントや健康食品を摂取するとか体にいいことを積極的にやったほうがよいと思いますね。

山田

ガンにならないようにするには日ごろ、どんな点に注意したらよいですか。

安保

ひとことで言えば「無理せず、楽せず」という生き方を勧めたいですね。無理をすれば、交感神経が緊張し、血管が収縮して血流障害や体温の低下を招きます。逆に楽をすれば副交感神経優位の状態となり、筋肉を使わないから体温は下がり、血管も広がりすぎて血流も悪くなる。結局、どちらに偏っても体は破綻しかねません。

山田

つまり「中庸」が一番ということですね。健康を保つには自律神経を整えることが大事ということがよく分かりました。要は活動と休息のバランス。私も今日から「無理せず楽せず」の生き方を実行していきたいと思います。(笑)

「病気」は江戸中期以降の言葉

安保

ぜひ、やってください。ところで、東洋医学では「冷えは万病のもと」というでしょう。「無理しても血管収縮による低体温」、「楽しても代謝抑制による低体温」、だから「冷えは万病のもと」になるわけなんですね。この言葉は(私たちの唱える新しい免疫学の考え方を)ズバリ捉えています。つまり、東洋医学では、低体温は、病気と健康の境目である「未病」の状態であると見抜いていたんですね。東洋医学では冷えると、病気になり、体を温めると病気は治る、という考え方に基づいて治療しています。日本や中国などアジアの国では分析的研究はあまり発展しませんでしたが、こうした体全体を捉える医学や思想は、発達したんですね。日本では江戸時代中期までは病気のことを「病気」とは言わず「病(やまい)」と言っていました。それ以前、特に奈良や平安時代のころは、病は、いろいろな憑き物や怨霊が取り付いているためで、それを祈祷して取り払えば病は回復すると考えていたんです。

山田

そういえば、その時代の歴史に加持祈祷はつきものですね。

医師の外見をも変えた後藤艮山

安保

その通りです。江戸中期になって、医家の後藤艮山(ごとうこんざん)がそれまでの医学に疑問を抱き、病気は憑き物が原因ではなく、生き方が偏っていたり、「気」が停滞した時、初めて病になるとして「病気」という言葉を使ったんです。また彼は、それまでの医師が剃髪し、袈裟をまとっていたのを自ら髪を長髪に束ね、服装も平服に改めたことで知られています。医業を宗教から独立させただけでなく、外見からも医師の姿を変えていったんですね。

山田

それはすごい。中医学でも気の流れという概念がありますが、非常によく似ていますね。「気」というのは、血流とかエネルギーのことですか。

安保

そうです。顔色が悪くなったり、元気がなくなるのは気が停滞したためと考えたわけですね。よく、「病は気から」というでしょう。これも、「気を通さないと病気は治らない」という江戸時代の医家の考え方に基づいた言葉なんです。このように当時の医家が病気の概念をつくりあげたのに、明治維新になって西洋医学が入ってきて、「気の流れ」という病気の概念が臓器別医療などの分析科学に取って代わられたために、体全体を統括するような思想が失われてしまったわけです。

改めたい薬依存の生き方

山田

残念ですね。話は変わりますが、私は自然豊かな岡山県の田舎で生まれ、ミツバチと一緒に育ちました。野原や山、川が遊び場で、物心がついたころには家族と一緒に早朝、巣箱に向かい、父の養蜂を手伝いながら仕事が終われば山菜を採って帰ったのをよく覚えています。自然とともに生きる生活でした。ミツバチも、自然環境がよくないと生きてはいけません。養蜂はまさに自然を相手にした農業でした。父は40年以上前からミツバチを飼育する傍ら有機無農薬でコメや野菜を作っていました。「農薬は必ず副作用がある」と言っては、頑なまでに無農薬にこだわっていましたね。また、体の弱かった妹や私は、健康づくりのためにローヤルゼリーやハチミツジュースをよく飲ませられました。そんな父を間近に見ていたせいか、私も薬を飲んで一時的に症状を軽くするのは根本的には健康のためによくない、とずっと思っていました。だから、先生がよく言われる「薬はむやみに飲まない」という考え方には、たいへん共感を覚えます。

安保

薬はね、急性疾患などで熱が出たり、痛くてどうしてもがまんできないような時は、使ってもいいと思いますよ。でも使っていいのは、せいぜい2、3日、長くても1週間以内ですね。薬はつらい症状を抑える対症療法だから短期間、使うのはよいとしても、長期間使えば体に負担をかけるし、かえって病気を治りにくくさせてしまう。元々、私たちの体は破綻してもそのまま、つぶれてしまうわけではありません。例えば、歯周病にしても痔にしても、あるいは潰瘍性大腸炎などでも、腫れたり、発熱したり、痛みが出ても、それは破壊された組織を修復にかかる治癒反応なんです。それを長期にわたって薬で無理やり押さえ込もうとすれば、治る病気も治らなくなってしまいます。

病気の改善へ免疫力高める

山田

確かに私たちが風邪を引けば、医師から当たり前のように解熱剤が出ますよね。それを当然のように飲んで熱が下がれば、すっかり治ったように思いがちです。でも、熱を薬で強引に下げることによって、風邪がいつまでも長引き、逆に完治を遅らせていることに、多くの人は気づいていません。解熱剤で熱を下げるのはまったく逆効果だったんですね。

安保

その通りです。元々、ストレスで交感神経が緊張した結果、病気になっているのに、さらに交感神経を緊張させる薬を使用するわけですから病気が難治化するのは当たり前です。

山田

先生は、著書の中などで消炎鎮痛剤とステロイド剤は使ってほしくない薬の一つにあげておられますが、なぜでしょうか。

安保

前述の通り、薬には交感神経を緊張させて、血流障害を招き、体を冷やす作用があります。消炎鎮痛剤とステロイドは、その作用が強く、顆粒球増加による組織破壊につながりやすいんです。こうした薬に頼ると、新たな病気を呼び込んでしまう恐れがあります。例えば消炎鎮痛剤は頭痛でも、生理痛でも、腰痛の時もよく使われますよね。特に腰痛や筋肉痛に襲われた時に、私たちは湿布薬を患部に貼りますが、湿布薬も形を変えた消炎鎮痛剤で、貼れば血流を止める世界に入るわけです。半年も1年も、使い続けていたら体の方がまいってしまう。しかし、これまではこうした考えには医師も患者も思い至らなかったわけですが、最近は、「対症療法中心の今の医療は、変だ」と感じ始める人が増えてきたような気がしますね。サプリメントや健康食品への関心が高まり、実際飛ぶように売れていることからも、今の医療に疑問を持ち始めている人が確実に増えてきた何よりの証拠だと思います。

山田

薬の長期使用に問題があるとすれば、病気にどう立ち向かったらよいのでしょうか。

安保

薬を山ほど飲んだら、病気が治る、という考え方をまず変えた方がよいですね。薬に頼っていては体調も、病気もよくならないことに早く気づいてほしい。薬だけに頼らず、体によい生活習慣を身につけ、免疫力を高める方が病気は改善に向かいます。

(企画制作、写真提供:毎日新聞社広告局)

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