ミツバチの童話と絵本のコンクール

まんまる おつきさま おねがいよーう

受賞石川 基子 様(愛知県)

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「おまえが のさばるから、
こっちに おひさまが あたらない。」
「ちがう、おまえだろ。」
「あんたが、よっかかるからよ。」
ねっこが からまって、えだが こんがらがって、
たいへんな さわぎです。
その したで、キスゲのはなが ふるえながら、
ケムリンさんを よんでいました。
ケムリンさんは うすい ドレスを
ひるがえしながら、
みつごの きの あいだを とびまわりました。
すると ゆらゆらと えだが ゆれ、
すこしずつ こんがらがった けんかは
おわりに なりました。
みつごのきの あいだに、
きもちの いい かぜが ふきぬけ、
おひさまの ひかりが さしはじめました。
「ありがと、ケムリンさん。」
キスゲのはなたちは
ほっと したように いいました。

よるに なると、ケムリンさんは
せいたかのっぽの
きの うえに ゆったりと すわっています。
ケムリンさんの いちばん たのしい じかんです。
もりに すむ こどもたちの ゆめが
ふうせんのように のぼってくるのです。
それを みて、ケムリンさんは
いっしょに わらったり、
いっしょに ないたり、
そうそうって、うなずいたり……。

でも ときどき
こわい ゆめが のぼってきます。
くるしそうな なきごえも
いっしょです。
ケムリンさんは
ぷーっと いきを ふきかけて
ふうせんを ふきとばして、
かわりに こもりうたを
うたってあげます。
すると なきごえは
ぴたりっと とまり、
かわいい ねいきが
きこえてきます。

なつの おわりごろに なると、
こんな こえが きこえてきます。
「ケムリンさん、ことしも おてんき、おねがいね。」
あっちからも、こっちからも……。
「ええ、まかせてよ。」
ケムリンさんは つぶやきます。
そう、
もうじき もりの ダンスパーティーの
よるが やってくるのです。
いちねんに いちどの、
みんなが たのしみに している パーティーです。
あめだけは ごめんです。
それで ケムリンさんは、
このよるは あまぐもの もくべいさんに、
おんせんりょこうに いってねって、たのみます。
なつの おわりに よく くる たいふうの
びゅーびゅーさんには、
みちくさしてきてねって たのみます。

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