健康食品、化粧品、はちみつ・自然食品の山田養蜂場。「ひとりの人の健康」のために大切な自然からの贈り物をお届けいたします。
おだやかな暖かい日、いっぴきのハチがのんびりと飛んでいます。
かれの名前はラルゴ。
音楽では「とてもゆっくり」をあらわす言葉で、そのとおり、彼はとてもゆっくりさんです。
「ちぇっ!またラルゴのやつ、さぼってるよ」
「あんなにゆっくりしか飛べないなんて、まるでカタツムリだね」
「空飛ぶカタツムリか。そりゃいいや!ははは!!」
なかまのハチたちは、のんびりと花のみつを集めるラルゴを追いこす時、わざと聞こえるように、ちょっといじわるをしてこう言います。
「ぼくはさぼってないのにな」
ラルゴはふだんは気にしませんが、あまり言われると、やっぱり悲しくなります。
「ぼくはぼくだけど・・・ぼくなりにいっしょうけんめいしているんだけど・・・」
なかまのハチたちは、毎日まいにち巣から遠い花まで飛んで、みつを集めていますが、ラルゴは、たくさんは集められないのです。
「ぼくはダメなハチなのかな」
ラルゴの目から、ときどきなみだがこぼれます。
ある日のことです。
気持ちをきりかえてラルゴが花のみつを集めていると、今までかいだことのない、なんともやさしくふしぎなにおいに出合いました。
「なんだろう?なんのにおいだろう?」
そのにおいにさそわれて、ラルゴが行ってみると、そこには今まで見たことのない花が咲いていました。
「わぁ!この花、なんていう花なんだろう?いつの間に咲いたんだろう!」
その花は、まっ白で大きく、かがやいていました。
「あなたは、なかまよりもみつを集めるのは遅いかもしれない。でも、あなたはいっしょうけんめい集めているわ。だいじなのは、ほかのハチとくらべっこするんじゃなくて、自分に負けないことよ」
ラルゴがふとわれに返ると、さっきまで目の前にあった、あの白くてかがやいていた花はありませんでした。
「あれ?きれいなお花、あったよね?」
ラルゴは夢を見たのでしょうか。花はどこにもありません。ラルゴはふしぎな気持ちでいっぱいです。
ふしぎと言えば、もう一つ。
ラルゴの手には、虹色に光るみつがあったのです。
それからはラルゴはなかまがからかっても、まったく気にしなくなりました。
夢だったかもしれないけれど・・・
あの白いお花は、ちゃんとぼくを見てくれていたから。
だいじなのは、なかまとくらべっこするんじゃなくて、自分に負けないことだって気付かせてくれたから。
ラルゴはなかまたちがいやがる、雨の日も風の強い日も、みつを集めに出ました。
すると、ラルゴをからかっていたなかまは、いつの間にかいなくなりました。
「なあ、ラルゴって変わったよな」
ある時、以前からかっていたなかまのミツバチが言いました。
「うん、本当だよね。ラルゴ、どうしてそんなに強くなったんだい?」
そうなかまに言われて、ラルゴは、はじめてあの白くてかがやく花のことを話しました。夢かもしれないけど・・・その花は、だいじなのは自分に負けないことって教えてくれたんだ。気がつくと花はなくなっていて、でも、虹色のみつが手についていて・・・と。
その話を近くで聞いていた長老が、おどろいた顔で言いました。
「それはまぼろしのドリームフラワーにちがいない。勇気と希望を与える花なんだよ。見つけようとしても、なかなか見つけられない花なんだ」
長老でさえ、見たことがないそうです。
ドリームフラワー 夢の花。
ぼくがぼくらしくあるように、そう教えてくれた花。ラルゴは思いました。本当に夢の花だったなって。