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ミツバチの童話と絵本のコンクール

あゆちゃんへ まさしより

受賞鬼頭 あゆみ 様(三重県)

「ほんとは いじめたくなかったんだ。」
 まーくんは、家に帰ってから、ぼそりと言った。
「しかたないじゃん。ぼくのほう、ぜんぜん見てくれないんだもん。ぜんぜん、しゃべってくれないんだもん。あゆちゃんが、わるいんだよ。」
 まーくんは、ぶつぶつ言いながら、学校であったことを、思い出した。
 二時間目が終わってすぐ、ぼくは、
「ドッチするもん、この指とまれ。」
って、教室中に聞こえるくらいの声で、さけんだ。男の子が数人、女の子も二・三人、よってくる。あゆちゃんと仲のいい子も、
「うん。やるやる。」
って、指つかみにきた。
 てっきり、あゆちゃんも来てくれると思っていたのに、あゆちゃんは、自由帳を取り出して、絵をかきはじめたんだ。まったく、むしされて、悲しくて、はらがたったんだ。それで、あゆちゃんの自由帳に、ぐるぐるぐるって、思いっきり書いた。あゆちゃんが、ぼくを見る。はじめて、目があったんだ。うれしくて、ぼく、にやってする。あゆちゃんは、泣き出す。ぼく、びっくり。どうしていいかわからないから、運動場に走っていったんだ。
 三時間目、あゆちゃんのことが気になって、ちょこちょこせのびする。三つ前にすわっているあゆちゃんはちらっと、うしろすがたしか見えない。その後の休み時間も、あゆちゃんを見たいけれど、なんだか見るのがこわくて、すぐ外にとびだした。いつもは、おかわり三回する給食も一回もしなかった。入学して、はじめてのことだ。今日のメニューは、カレーライスとフルーツゼリー。ぼくが、おかわりの手を上げないから、先生まで、ふしぎそうに、ぼくを見ていた。
 ぼくだって、こんな気持ちになること、あるんだ。あゆちゃんを泣かしちゃったこと、先生には、ばれていないみたい。ほっとしたけれど、先生とは、目があいたくない。そうじの時も、ほうきをふりまわしたり、ぞうきんをなげたりして、先生や女の子に注意されるのが、あたりまえの、ぼくだけれど、今日は、自分でもびっくりするくらい、おとなしく、ほうきを動かしていた。みんな、目を丸くしていたけれど、ぼくだって、こんな時、あるんだ。
「今日も、サッカーしようぜ。」
って、あきらたちが、さそってくれたけれど
「今日は、ちょっと、やめとくわ。」
って、より道もしないで、ふつうに帰ってきたんだ。あーあ、こんな気持ち、はじめて。
「あゆちゃん、ぼくのこと、きらいになっちゃったかなあ。おこってるかなあ。どうしよう。」

 台所のテーブルには、お母さんが用意してくれたおやつが、のっている。仕事で帰りがおそくなるから、毎日、なにか用意してくれているのだ。
「おかえりなさい。今日のおやつは、まさしの大こうぶつの、はちみつたっぷりパンケーキでーす。ゆっくり めしあがれ。」
 広告のうらに、大きい字で、手紙も書いてくれる。はちみつのあまいにおいが、ぷーんってしたら、おなかが、ぎゅるぎゅるって、すごい音を立てた。
「やっぱり、おかわりすりゃ、よかったな。あゆちゃんもパンケーキ、すきかなあ。ぼくのことも、すきかなあ。うーん、とにかく、はらがへっては、なにも考えられないや。いただきまーす。」
 お母さんの手紙を見ながら、パンケーキを三枚とも食べてしまう。
「ああ、おいしかった。あゆちゃんに、あした、あやまろうかな。でも、はずかしいなあ。どうしよう。そうだ。あゆちゃんに、手紙書いて、あやまったらいいや。」
 はちみつのついた指で、『ごめんね』って、お皿に書いてみた。
「そうだ。はちみつで、手紙書こう。あゆちゃん、きっと、びっくりするぞ。」
 ノートを一枚、びりびりやぶって、えんぴつで、一番上に『あゆちゃんへ』、一番下に『まさしより』とだけ、書いた。ひとさし指に、はちみつをたっぷりつけて、真ん中に大きく、『ごめん』と書く。しっかりかわいてから、ふうとうに入れる。
「できあがり。あした、これ見て、あゆちゃん、わらってくれるかな。」
 次の日、学校が終わって、げた箱の所で、勇気を出して、手紙をさしだした。あゆちゃん、ちょっとにこっ、としてくれる。ほっ。
 手紙をもらったあゆちゃん、うれしくて、家に帰って、こっそり見た。
「なに、これ。なんにも書いてない。」
 がっかりして、つまらなくて、はらがたって、まどから、ポイってすてちゃった。
「まーくん、ひどいわ。からかうなんて。おやつ食べたら、みいちゃんちに、あそびにいこー。」
 あそびに行く時、庭を見たら、さっきの手紙がおちている。なんとなく見たら、黒い。ありがいっぱい。うわっ。よく見たら、なんだか字のようだ。
「えーと、『ご・め・ん』って書いてある。まーくんったら、すごくおもしろい。あそびに行くのやめて、わたしも。」
 次の日、まーくんへわたした手紙には、はちみつで、『いいよ』と書いてあった。

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