ミツバチの童話と絵本のコンクール

ありがとうミツバチくん

受賞伊藤 徹 様(三重県)

「こんにちは。こんにちは。」
 やさしさ森はキラキラして、クマのマーは今日も朝から大すきなハチミツをペロペロとなめてごきげんです。
 きのうとなり森からクマのクーがやさしさ森へお引っこししてきました。
 マーとクーはすぐお友達になって、木登りしたり、川でバシャバシャと大はしゃぎで、楽しく遊んでいました。
 ところがある日、二頭はケンカをしてしまいました。
 マーのハチミツのツボの中が空っぽになっていたのです。はじめは、こぼしたのかと思ってあたりじゅうを見まわしたりしました。
 はっとクーを見ると、おいしそうにハチミツをペローっと、食べているのが見えたのです。
 マーは、なんとなく自分のハチミツのにおいを感じ、クーの所へ行って、聞いてみることにしました。
「クーくん。そのハチミツいっぱいどうしたの。」
「ミツバチくんたちが、いっぱいプレゼントしてくれたんだよ。」
 とクーは、言いました。
 マーは、
「ぼくのハチミツのツボが空っぽになってたんだよ…。もしかしてぼくの……。」
 クーは、とつぜんおこってしまいました。
 せ中を向けて走っていってしまったのです。毎日、二頭は遊ばなくなりました。
 ショボンとマーがしていると、ブーンブーンと羽の音がしました。
「どうしたの。元気がないね。」
と大のなかよしのミツバチのミツくんが声をかけてくれました。
 わけを話すと、
「それはマーくんのかんちがいだよ。」
とミツくんは言いました。
「エッ。どうしてだよ。」
「クーくんは前いた森のなかまのミツバチくんたちが、おたん生日のクーくんへ、わざわざ遠くから何日もかけて、とんできては、クーくんへプレゼントをしたんだよ。」
とミツくんは、わけを話してくれました。
 マーくんは、はずかしくなりました。
 よく考えたら、遊びに行くときハチミツのフタをするのを忘れていたことに気がつきました。
「なんてバカだ。ぼくは……。」
「クーくんがおたん生日だった事も忘れていたなんて。」
 なみだがポロッと、落ちました。
 それを見ていたミツくんは、どこかへあわててとんで行ってしまいました。
 家にトボトボ帰ってマーは、ハチミツのツボの中を開けると、なんと、いっぱいのハチミツが入っていました。
「エー。なぜだろう。空っぽのはずなのに。どうしてだ……。」
 ずーっと考えていました。
 ブーンブーンと羽の音がしました。
 そおっと音の方を向くと何百ぴきものミツバチくんたちが帰っていくのを見ました。
 ツボの横に、
「クーくんへ、おたん生日プレゼントをわたしておいで。ね。なかよくなれるよ。」
と、ミツでかかれていました。
 マーは、なみだがあふれてしまいました。ぼくとクーくんをなかなおりさせるために、ミツバチくんたちは力を合わせて、こんなにたくさんのおいしいおいしいハチミツをたっぷり用意してくれたんだ。
 さっそく、なみだをふいて、クーくんの家へ行き、トントンと戸をたたきました。
「だれ?」
「あのーマーです。ちょっと出てもらえませんか……。」
 小さな声で言いました。
 ガタン…戸が開きました。
「クーくん。おたん生日おめでとう。この前はきみをうたがってゴメンナサイ。」
 マーは、ゆう気を出して言いました。
 クーくんは、
「ありがとう。こんなにたくさんいいのかい。」
「ぼくの友達のミツバチくんが、バカなぼくのために用意してくれたんだよ。」
「クーくんは、いいお友達をもって幸せだね。」
と言って、あく手してくれました。
 また次の日から二頭はなかよくなり、やさしさ森の中を走り回って遊んでいます。
 空を見て二頭は、
「ありがとう。ミツバチくん。」
と何度も何度も大きな声でさけびました。
 なにげなく、そおっとしてくれた心やさしいミツバチくんに、一生感しゃする二頭でした。

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