ミツバチの童話と絵本のコンクール

ダンジャグケーシー ゴンボホリ

受賞さくらぎ まあや 様(秋田県)

 朝になり ナオッペが目を覚ますと 老婆はいなかった。ナオッペは 川へ行き 手で 水をすくって飲んだ。 本当にこの川の水は うまかった。
 川の中をよく見ると、底の方でキラキラと光るものがみえた。金色に光るそれに手をのばし 指でさわってみた。 トロリとした感じがした。何だろうと思い においをかいでみた。花のような甘い香りが かすかにした。
 ナオッペはペロッとなめてみた。
「あんめぇ すげぇうめぇ 何だこりゃ?」
「それは はちみつだ。」
 いつのまにか老婆がもどって来ていた。
「この木の上に巣 作りおった。」
 頭の上の方で ブンブラ ブンブラ言う音が聞こえた。
「わしがこさ来て火たくもんだで クマが逃げていくからな、礼のつもりなんか ポトリと時々 はちみつを落してくれるのだ。」
 そう言うと老婆は 二つの竹筒をさしだし みやげだと言った。
「ひさしぶりに うまい魚を食わせてもらった。ありがとうよ。」
 ナオッペは 竹筒を受けとった。家に帰りたくはなかったが この水をソノに飲ましてやりてぇと思った。
「ばあちゃん オラまた来てもいいか?」
「勝手にせばいいべぇ。」
 ナオッペは走りに走って 家へ帰った。

 家に着くと 何やら村の大人が集まり大さわぎしていた。だれもがドタバタと走りまわり ナオッペには目もくれなかった。 そこへおどちゃが来て言った。
「ナオ!!お前は部屋さは 入って来んな。ソノが熱を上げて苦しいんじゃ 分かったか。」
 ソノが熱を上げたって?
 ナオッペは胸の奥に ズキンとしたものを感じた。心配だった。でも 大人達が沢山いて 部屋をのぞくことすらできない。
 ナオッペは庭の方へ行き、木の影から様子をうかがった。
 やれ医者じゃ、薬じゃとあわてているおどちゃとおがちゃが見える。しかし ソノの様子は全く分からない。じれったかった。
 夜になり いつのまにか家の中は静かになっていた。見るとおどちゃは縁側で おがちゃは台所で いねむりしていた。きっと疲れたのだろう。 ナオッペは こっそり そうっとソノの部屋へ入った。
 ハァハァと苦しそうな息づかいをしていた。
 ナオッペは ソノをだきおこし あの竹筒に入っている水を さじですくって ソノの口元へ入れてやった。 ソノは ねむったままチュパチュパとそれをなめた。何度かやっていると、ソノがうっすらと目を開けた。
「あんちゃあ 帰ってきたけぇ。」
「苦しいかソノ がんばって ほれもう少し この水を飲めや。」
 ナオッペは さじで水をすくい 何度も ソノの口へ入れてやった。ゆっくりゆっくり飲ませてやった。 もうひとつの竹筒を開けてみると フワリとさわやかな香りが立ち、中には カリンの実が割られて はちみつに漬けてあった。 ナオッペは はちみつをすくい 少しずつ ソノになめさせてやった。
「うめぇなぁ あんちゃ。」
 夜が明けるころ 二つの竹筒は すっかりカラになった。あんなに苦しそうだったソノがニッコリ笑ったのを見て ナオッペはほっとした。いびきをかいていたおどちゃが 起きて来そうだったので
「ソノ いい子で寝てるんだぞ。」
 と言い あわてて部屋を出た。
 おどちゃは ハッとしてとび起き ソノを見た。ウソのように熱が下がり、おちついた様子で ぐっすりとねむっていた。
 ほっとして ふと見ると 見たことあるような竹筒がころがっていた。ひろいあげ においをかぎ ペロリと指で中味をすくいなめた。 するとおどちゃは びっくりしたように目をまんまるに見開いた。
「まんづなつかしい これはカリン漬け。オラのバサマが よくこしらえていた あのカリン漬けじゃねぇだか。 カゼばひいてぇ のどっこ痛ってば よく なめらしてけたっけなぁ。しかし、なして ここさ これがあるんだべか?」
 おどちゃはジーっと首をかしげておった。
 ソノは スヤスヤねむっておった。
 おがちゃは 朝まま(朝ごはん)の支度でいそがしくしておった。
 ナオッペは、どこさ行ったもんだかなぁ…。

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