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ミツバチの童話と絵本のコンクール

ありがとうの花

受賞平山 桂子 様(愛媛県)

 おばあちゃんとネコの「ノラ」が仲良く暮らしていました。ノラはおばあちゃんが大好きです。
 ある時、ノラは思いました。
「大好きなおばあちゃんに何かしてあげたいなぁ……。」
「そうだ!」
 ノラはおばあちゃんのお誕生日に何かステキなプレゼントをあげようと考えました。しかし、一匹では良い案が浮かびません。ノラは早速ネコ仲間に相談しました。
 仲間の一匹が
「ユビワとかネックレスなんかどう?きっと喜ぶよ。」
「いやぁ、私はバック。」
「やっぱりケーキよ。」
 すぐにこの話は盛り上がりました。中には調子にのっておどり出すネコもいます。
 しかし、
「そんなの高くて買えないよ……。」
 ノラは困って言いました。仲間達は申しわけなさそうに黙ってしまいました。
 すると、もう一匹のネコが
「ウワサなんだけど……南の森の丘の上に『幸せの花』っていうのがあるらしいよ。とってもきれいなピンク色の花らしいんだ。」
 その話を聞いた瞬間、ネコ達はまた盛り上がりました。ノラはキラキラと目を輝かせています。
 ノラは大急ぎで家に帰りました。そして、おばあちゃんにはわからないようにこっそりと旅の仕度をすませました。おばあちゃんにはいつものように「遊びに行ってきます。」と声をかけて、出かけます。
「おや、ノラはまたお散歩かい?」
 おばあちゃんはにっこりと笑っています。
 南の森はそう遠くはありません。きっと夕方には帰れるはずです。「あの花があればおばあちゃんも大喜びだ。」
 ノラはうきうきして風のようにかけていきました。
 ノラがうきうきと南の森の丘の上を目指している同じ頃、南の小川に住んでいる小さなミツバチが、小川の横の葉っぱのかげでしくしく泣いていました。このミツバチの名前は「バチ」。バチはこのごろ元気がありません。
 バチはいつも仲間外れなのです。仲間外しのハチ達はオニごっこをして遊んでいますが、バチはオニごっこに入れてくれません。
 そんなわけで、バチはいつも来るてんとう虫のおじさんとお話ししているのです。
「今日も僕は仲間外れなんだ……なんで、みんなは僕だけ仲間に入れてくれないの?」
 バチは涙をふきながらおじさんに話します。おじさんは
「泣いているだけじゃわからないよ、もっと自分の気持ちをみんなに話しかけてごらん。」
 と優しく答えてくれます。
「でも……。」バチはもの言いたげな様子です。
「勇気を出して話しかけてごらん。」
 おじさんはもう一度優しく言いました。
 すると、おじさんは急に思い出したように、
「バチは南の森の丘の上にある『勇気の花』を知っているかい?とってもきれいなピンク色の花なんだ。」
 とにっこり笑いました。バチは笑顔に戻りました。いじめっ子のことをすっかり忘れ、この話に夢中です。だんだんバチはその花が欲しくなりました。その花があればきっと友達がいっぱいできると思うようになりました。
 おじさんは地図を渡し、
「気を付けるんだよ、バチ。」
 心配そうに言います。バチは地図を背中に背負いました。突然ふわりと大きな風が吹き、地図が飛ばされてしまいました。
 バチがあわてて拾おうとしたその時、一匹のネコがひょっと拾ってくれました。
 ノラでした。
「ありがとう、ネコさん。」
「どこかに出かけるの?」
 ノラはたずねます。
「うん。南の森の丘の上に花を探しに行くんだ。」
 バチは喜んで言いました。
「え!僕も花を探しに行くんだ、じゃあ一緒に行こうよ。」
 これから二匹の旅が始まります。
「僕はノラ。『幸せの花』を探しているんだ、君は?」
「僕はバチ。『勇気の花』を探しているんだ、あれ?探しているものが似ているね。」
「それからバチ、君の体にその地図は重いだろう、僕が持ってあげるよ。」
「ありがとう。」
 二匹は、稲穂が波のように揺れるあぜ道を通り、さらさらと水の音が聞こえる橋を渡りました。ここまで来れば南の森はすぐそこです。バチはもう少しだねと言ってノラにほほ笑みます。
 しかし、森についた二匹はのどをならしました。南の森は、まるでジャングルのようです。バチはびくびくとおびえています。
 すると、
「一緒に行けばこわくないよ。きっと丘の上まで行けるよ、がんばろうよ。」
 バチはうなずきました。
 それでも、やっぱり森の中は真っ暗です。
 でも、
「大丈夫。僕の頭の上に乗りなよ。実は僕、この目が自慢なんだ。」ノラは得意気に言います。
 それから二匹は地図を見て進むことにしました。しかし……どう道を間違えたのか……あたりはどんどん深い森になっていきます。あたりも、もううす暗くなってきています。おばあちゃんもおじさんもきっと、心配していることでしょう。そうしているうちにとうとう真っ暗な夜がやってきました。 どうやらすっかり道に迷ったようです。二匹は、しかたなく体をぴったりと寄りそって眠りました。
「あっちだ。」
「いや、こっちの道だよ。」
 二匹は地図をたよりに一生懸命歩き続けました。お日様のあるうちは一日中、歩き続けます。夜は、二匹寄りそって眠りました。そんな日が何日続いたでしょう。
 ある朝、とうとうノラは
「お腹がすいて、もう歩けない……。」
 ベソをかいて座りこみました。何日も歩き続けて、ノラはすっかり足をいためてしまっていました。
 それを聞いたバチは、何を思ったのか、
「そこで待ってて。」
 とノラを残して、森の奥へどんどん飛んでいってしまいました。バチが戻って来たときには、ハチミツを両手いっぱいほどもかかえていました。でも、 バチのいっぱいは、ノラにとってはたった一しずくにしかなりません。それでもバチはノラにミツを飲ませると、またミツを集めに飛んでいきます。そんな日が三日も四日も続きました。

 バチのハチミツ一滴一滴が、ノラを少しずつ元気にしていきました。ノラの疲れきった体や心が不思議な元気につつまれてきます。
「ありがとう。僕はもう大丈夫。バチのおかげですっかりよくなったよ。」
 ノラはそう言ってまた、立ち上がりました。二匹の旅はまた始まりました。
 いつものように地図を見ながら森の中を進んでいるときです。ふと気がつくとバチの姿が見あたりません。おかしいなと思ったノラは、さっき通 った木の下へと戻ってみました。
 バチの姿はどこにも見えません。ノラはだんだん心配になってきました。木の下をうろうろと行ったり来たりするノラ。
 と、突然
「ノラ、ここだよ!助けて。」
 悲し気なバチの小さな声がノラの耳に届きました。なんということでしょう、バチはこの木の上のクモの巣にひっかかっていたのです。大きなクモがかわいそうなバチにむかって少しずつ近づいています。ノラはクモにあわてて言いました。
「お願い!助けて下さい。バチは僕の友達なんです。」
 ノラは大声で叫びました。
 クモは黙っているだけです。
「大切な友達なんです!お願い。」
 するとクモが言いました。
「では、お前はこの子のかわりに私に命をくれるのかい?」クモはにやりと笑っていいました。
 ノラはしっかりと大きな声で言いました。
「ああいいとも、そのかわりバチを食べないで。お願いです。」
 クモはバチからはなれました。
「ハチ……お前は良い友達がいてよかったな……。」
 バチはどっと涙があふれてきました。木の下に立っている二匹にむかってクモがボソリといいました。
「お前達は丘の上に行きたいんだろう?この道をまっすぐ進めば森をぬけられる。」
 そういうと、クモはまた、するすると木の上へ上がっていきました。
「ありがとう、クモさん。」
「クモさん、ありがとう。」
 二匹は、クモの教えてくれた通りまっすぐ道を進んでいきました。しばらくするとあの深い森が左右に開け、青い空が見えてきました。
「あっ、丘が見える!」
 バチが叫びます。
 しかし、ほっとしたのもつかの間、たどりついた二匹は驚きました。
 花は一本しか咲いていないのです。これでは、幸せの花か勇気の花か分かりません。困った二匹は一本の花の前で座りこみました。
 二匹がため息をついていると、突然、
「どうしたんだい?そんな暗い顔して。」
 と、花がしゃべり出したのです。
 二匹はびっくりして、花の中をのぞきこみました。
 すると、アリがひょこっと顔を出しました。
「君はこの花の事をよく知っているの?」
 ノラは言います。
「もちろんさ。僕はこの花がこんな小さい芽の頃からずっと見守ってきたんだよ。」
 アリは自信満々で答えました。
「じゃあ、この花は幸せの花なの?勇気の花なの?」
 バチがせかすように言います。
 すると、アリは
「うーん。幸せの花って確か呼ばれていたかな、でも、誰かが勇気の花とも呼んでいたなあ。」
 思わず声をそろえて、
「本当はどっちなの?」
 と聞きました。
 アリはゆっくりと優しい声でこういいました。
「まぁ、本当はこの花には名前なんてないんだよ。名前のない花さ。」
 ノラとバチはキョトンとして、顔を見合わせました。
 ああ、何ということでしょう。今まで一生懸命探していた二本の花はもともと一本の花だったのです。二匹は考えこんでしまいました。ノラはおばあちゃんにこの花をプレゼントしたい、でもバチも友達がいっぱいほしいのです。
 しばらく黙った後、しゃんと顔を上げたノラはバチの顔をみながら静かだけれどもはっきりした声で、
「僕はいらないよ。」
 といいました。バチはこの言葉にびっくりしました。バチはたまらなくこの花が欲しいのです。それはノラも同じだということをバチは知っていました。ですから、ノラがそんなことをいうなんて思ってもみなかったのです。
 バチは、
「ありがとう。でも……僕はノラがいてくれたからここまで来れたんだよ。この花はノラがもらうべきだよ。」
 バチは、ポロポロと泣きながら言いました。
 きれいなピンク色の花は、二匹の方をずっとみているように見えます。
 結局、ノラとバチは名もない花をつみとらないで帰ることにしました。あれだけ欲しかった花なのに、ちっとも残念な気がしません。
 二匹の心はとってもあたたかかったからです。おばあちゃんにあげる花は、どの花だっていいのです。相手を思う心がこもっていればその人を幸せな気分にできるのです。思いを伝えるだけで友達だっていっぱいできるのです。二匹はそれがわかりました。
 二匹は森をぬけ、橋を渡り、あぜ道を通りました。わかれ道、もう夕方です。
 ノラは、
「早く帰らなくちゃ、おばあちゃんが心配してる……。ありがとう、バチがいてくれたからここまでがんばれたんだ。」
「僕だって……ありがとう。」
 バチもにっこり笑いました。二匹は自分の家へ帰って行きます。
 それを見ていた鳥達は、南の森の仲間達に話しました。鳥達は東の森、西の森、最後に北の森まで二匹の話を広めました。
「幸せの花、勇気の花……ありがとうの花……。」
 鳥はそうつぶやきながら飛び回っています。
 それ以来、丘の上のあの花は「ありがとうの花」とも呼ばれるようになりました。

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