ミツバチの童話と絵本のコンクール

ミツバチの新聞

受賞本間 百合子 様(東京都)

 どうしても知りたければ、ポストの前で見張るっていう方法もあります。でもそれは、みうにはルール違反のような気がするのです。考えぬいて、誰だかわからない届けてくれる人にあてて、手紙を書 いてみることにしました。
 “ミツバチ新聞を届けてくれている人へ
  いつも新聞をありがとうございます。ずっと楽しく読んでいます。 そこで新聞のお礼がしたいのです。きのうの新聞に書いてあった、「レンゲのお花畑」をあさっての朝、見に行こうと思っています。おべんとうを持っていくので、いっしょに食べませんか?たいし たことのないお礼で、すみませんが、ごちそうさせてください。”
  封筒に入れて、ミツバチ新聞配達人さまと書いて、ポストの郵便 マークのところに、ペッタンとはりつけました。

 その朝、みうはとても早くおきて、ドキドキしながら、サンドイ ッチを作りました。みうに作れるのは、コンビーフのサンドイッチ だけでしたが、それだけじゃさみしいので、おばあさんからもらっ たリンゴジャムのサンドイッチも作ってみました。水筒には、冷たい紅茶を入れました。

 あの日、配達人あての、手紙は夕方までになくなっていました。 だから、たぶん今日のおまねきには、来てくれるようなきがするのですが。

 ドキドキしながら、村の中の道を通って、坂をくだり、新聞に書 いてあった、レンゲ畑をめざします。みうは、とりわけゆっくりと歩きながら、そういえば、ミツバチ新聞のおかげで、村のまわりで 行ったことがないところは、ほとんどなくなったと気づきました。それから、山の道を歩くのがつらくなくなったような気もします。
(もう、学校までだってヘバらないで歩いていけるくらいかもしれ ないなぁ)
  そんなことを考えながら、坂を下り終えると…。

 なんてすごいのでしょう!見わたすかぎりのレンゲの波!一面のレンゲ色の海!
「こんなの、初めて見たよ…」
 
 みうが、うっとりと立ちつくしていると、むこうの方から、何人 かの子供達が近づいてきます。男の子と女の子、合わせて7人ほど。 なんだか、見たことのある顔です。
「レンゲ畑は、はだしで歩くと気持ちいいよ」
 一人の女の子が言いました。
「委員長?」
 みうがたずねると、そのこはうなずきました。そう、7人の子た ちは、みうと同じ村の小学校の4年生だったのです。
「なんで?」
 そう聞くと、みんなは口々にいろいろ話し始めました。社会科の 授業で、この村の産業をしらべたこと。春から夏の終わりまで、色々な花が咲き続けるので、ミツバチを飼う農家が多いこと。ミツ バチは一生のうちに集める蜜はスプーン一杯くらいだということ。調べたことを、新聞にする授業のこと。
「いろいろ調べて、新聞も作ってみたら、すごくおもしろくて。そ したら、みんなで転校生のみうちゃんに、村のことをもっと、知ってもらうには、新聞がいいかな?って」
「最初は、おみまいのプリントを作ろうかっていってたんだけどさ」
「こっちの方が、おもしろかっただろ?」
「みんなで、かわりばんこに配達したんだよ!」
 みうは、ありがとう、と言うかわりにうなずきました。
「すごく、おもしろかったよ。ミツバチ新聞」
「いや、新聞はまだ終わりじゃなくて……」
 日に焼けた男の子が言いました。
「そう、これからは栗の花の蜜をとるミツバチについてとか……」
「栗の畑は、いっしょに見に行こうよ」
「うん」
 返事をしながら、みうは栗の花の蜜は、いったいどんな味がする のだろうか?と考えました。それから、栗畑ってどんなのだろう?と。そうして、もしかしたらサンドイッチはたりないかもし れないって。レンゲ畑の上を、さわやかな風がふきぬけていきます。 もうすぐ、この村での初めての夏がはじまろうとしています。

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