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ミツバチの童話と絵本のコンクール

ふしぎなレストラン

受賞羽田 幸男 様(東京都)

クマはポケットからグラスを出しました。
それからふくろからハチの巣を取り出して、「このハチミツをなめると、いたみなんかきっととんでいっちゃうよ」といい、グラスにしぼりだしました。
「くわーっ」カラスはよだれをたらしました。「クマくんってやっぱりやさしいよね」
「ハチミツだって?」キツネは何かおもいあたるのか、まゆねをよせてかんがえこみました。マズイ、と思ったのか、クマはまたグラスにハチミツをしぼり、シェイクしてキツネにわたしました。
「これはね、とくべつなワイン・ハチミツなんだよ」
「オレはワイロでだまされないぞ・・・・・ん、ん」キツネは、鼻をくんくんさせると、舌をだらりとだしました。そして、グラスをつかむと、ぐびぐびとのどをならしながら飲みました。「いやー、マズイ。もういっぱい」
「マズイ?」クマは耳をぴんと立てました。「マズイなら、もうやらない」
キツネはあわてていいました。「じじょうだんだよ。あまりのおいしさにほっぺが落ちたぐらいさ」
「そうでしょ」クマは言いました。
それから、クマとキツネとカラスは、ハチミツでかんぱいしました。
ぼくは、あきれてしまいましたが、森の仲間ではないので、だまっていました。 それにしても、注文した料理はいつ来るのでしょうか。さすがのぼくも心配になりました。おなかもグウグルルとなっています。
「おそいなあ」
「まん月生まれのサケのハチミツ煮を注文したでしょう?」クマはペロペロ口のまわりをなめながらいいました。
「そうです」
「だったら、もうちょっとお待ちなさい。時が来ていませんから」
「時?」
「そう。まだサケが生まれていないんですよ」
「え?」ぼくはまたまたびっくりしました。「それじゃあ、何年も待たなくちゃならない。じょうだんじゃない」
「だいじょうぶ。もうちょっと、なんだ」クマはそういうと、両耳をピクピクして、空を見上げました。「ああ、月が出たぞ」
え?ひるまに月が出るなんてウソでしょ。
でも、たしかに、青空の中に、白い月が中空のあたりにうかんでいました。まあるい、ドーナツのような生まれたての月でした。
「まん月生まれのサケは、ちょうどこの時間にタマゴを産みにながいながい月の河をさかのぼっていくんです。そして、おいしい皮をぬぐんですよ。ほら、ごらんなさい」
クマが指したのは、原の中の小さなせせらぎでした。
キラキラ光るせせらぎの流れは、銀色のおびのように、くねくね曲がり、スミレの咲いた丘へ消えています。
見ていると、そのせせらぎのなかほどで、何かがピョーンとちょうやくしました。
いっしゅんでしたが、ぼくにはそれがサケのせびれが光ったように感じたのです。
また、ピカッと光りました。まちがいありません。
「さあ、サケの月登りがはじまるぞ」クマの声も、これから起こる出来事にいくぶんこうふんして、うわずっていました。
「わあ、サケだあ。サケのたいぐんだあ」キツネもさけびました。
「どれどれ」カラスはばたばた羽をさせて宙に浮いています。「ほんとだ。虹の河をさかのぼっていくぞ」
ぼくも、そのこうふんがのり移ったのでしょうか。ワクワクした気分になりました。
見ると、白いまん月からせせらぎまであざやかな虹が立っています。
その虹の下には、たくさんのサケが集まっているのか、しぶきが立ち、霧がもうもうとただよっています。
「とんだ!」クマが叫びました。
しぶきの中から、ほそながい影が矢のようにとび出しました。姿のいいサケで、虹の河を必死になっておよいでいきます。
サケは虹のカーブした河をながれにさからいながら、月にむかって空を登っていきました。
やがて月にとうちゃくしたサケは、ぴょんととびはねました。
そのあとから、ぴしゃぴしゃと数多くのサケがわれがちに続いて、虹のひかりにキラキラ光りながら、月に向かってそじょうしていきます。
虹の花たばの河をすいすいおよぎながら、ときどき、すべってしまうサケもいました。
ぼくとクマとキツネとカラスはその美しい光景をながめながらぼんやりとしていました。
野原には、虹のあわい影とサケの影がたわむれて、幻想的なふんいきをただよわせています。
「サケを神の魚っていう理由がわかるような気がするな」ぼくは、ひとりごちました。
ぼくらはただただいつまでもサケのおよぐすがたを見ていました。
いかにもそのすがたは神々しいものでしたから。
「ボクもサケになってお月さまのところへ行きたいなあ」クマがしんみりと言いました。
ぼくも、その意見にはさんせいで、ちょっぴりさびしく感じていたのです。
つぎつぎとのぼっていくサケは、それこそふるさとにかえるよろこびで、ひれをぴくぴくさせています。
サケの目から白いなみだがこぼれ、それが真珠のように光ります。
これが夜ならば、ホタルの光のようにみえたでしょう。
ひるまなのが、ちょっぴりそれがざんねんでした。
虹はどこまでつづいているのでしょうか。
ぼくは目をこらしてみましたが、わかりませんでした。
きっと遠くのくにまで行く橋なのかもしれません。
やがて、虹はだんだんと色がうすくなり、そして、空に溶けていきました。
それとともに、サケのさわがしい音も消えたのでした。
あとには、せせらぎが静かに流れているだけです。
「おまちどうさま」
いつのまにか耳のとがった少女があらわれて、両手にたくさんの皿をかかえていました。
皿には、サケがこんがりと油で焼かれていました。
クマはその皿のサケにハチミツをたらしました。
「さあ、これで、えいようまんてんの料理のかんせいだ」
まん月生まれのサケのおいしそうなにおいがぼくの鼻をくすぐります。
ぼくはナイフとフォークをにぎりました。
「いただきまーす」キツネ。
「はぐはぐ」カラスはもう口の中にいれていました。
「待って。森のなかまといっしょだよ」とクマ。
クマは、そう言うと、クマは、よび鈴のヒモをいっぱい引きました。
すると、それまで青々としていた木々のつぼみがふくらみ、あたりいちめんの森に白い花がポッポッと咲きました。
それはまるで白い花のクリスマス・ツリーのようでした。
花のあまいかおりを風がはこんできます。
「森の友だちが来るんですよ」クマはうれしそうにいいました。「実は、まん月生まれのサケは四年に一度しか食べられないので、森のみんなで食べるんです。でも、その時は、かならず人間のお客さんをひとりしょうたいするのが決まりなんですよ」
「サケとハチミツにかんぱい!」クマはさけびました。
「かわいそうなハチにかんぱい」ぼくも言いました。
「かんぱいだあ」とキツネとカラスの合唱。
森の方からは、たくさんの動物たちが走ってくるのが見えました。リスもいます。シカも、タヌキも走ってきます。
空はいい天気です。
ぼくの昼食が、ようやく始まりました。

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