ミツバチの絵本コンクール

歌うミツバチと沈黙の花

入選稲垣 寧紘 様(北海道)

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むかしむかし、とある静かな森に特別なミツバチの群れが住んでいました。この群れのミツバチたちは、羽根を震わせるとまるで歌の様な美しい音色を奏でることができました。

A
この森には「月光花」という不思議な花も咲いていました。月光花は音に反応しない限り、決して蜜を出しませんでした。静かに佇む白い花は、まるで森の中で瞑想しているかのよう。

B
ミツバチたちは毎晩、月明かりの下で集まり、羽音のハーモニーを奏でました。その音色に反応して、月光花はゆっくりと開き、甘い蜜を溢れさせるのです。

C
この群れのリーダー「ミーナ」は、一番美しい音色を奏でることができるミツバチでした。彼女の歌声は月光花を最も豊かに開花させ、集められる蜜は格別の味わいでした。

D
ある日、森に大きな変化が訪れます。遠くから機械の音がやってきたのです。人間たちが森の一部を切り開き、大きな建物を建て始めました。

E
機械の轟音は森中に響き渡り、月光花たちは混乱して蕾を閉じてしまいました。見慣れない騒音に、月光花は耳を塞ぐように花びらを固く閉ざしたのです。

F
ミツバチたちは困りました。どんなに美しい歌を歌っても、月光花は騒音にかき消されて反応しなくなったのです。蜜が採れなければ、巣の仲間たちは飢えてしまいます。

G
ミーナは考えました。「私たちだけではだめだ。もっと大きな音楽が必要なんだ」。彼女は勇気を出して、森の他の生き物たちにも協力を呼びかけることにしました。

H
セミは鳴き声で、小鳥たちは美しいさえずりで、カエルたちは夜の合唱で。それぞれが持つ自然の音色を持ち寄ることにしたのです。

I
満月の夜、森の生き物たちは集まりました。ミツバチたちの指揮の下、一斉に森の交響曲を奏で始めたのです。それは機械の騒音よりも力強く、でも自然の優しさに満ちた音楽でした。

J
しばらくすると奇跡が起きました。月光花たちが少しずつ花びらを開き始めたのです。自然の調和した音楽だけを聴き分ける能力が花にはあったのです。

K
その様子を見ていた一人の少女がいました。建設現場の責任者の娘でした。彼女は森の生き物たちの協力と、花とミツバチの神秘的な関係に心を奪われました。

L
少女は父親に森の特別な生態系について教えました。「この音楽と花と蜜の関係は、世界でここだけのものかもしれないよ」と。

M
父親は娘の話に耳を傾け、建設計画を見直すことにしました。森の一部を保護区域とし、騒音を最小限に抑える方法を考え出したのです。

N
今でもこの森では、満月の夜になるとミツバチたちの美しい歌声が響き、月光花が静かに開く神秘的な光景が見られます。それは自然の中で互いに響き合い、支え合って生きることの大切さを教えてくれる、静かな調べの物語なのです。

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