ミツバチの絵本コンクール

山の中のハチミツ屋

入選空虹 ちこ 様(滋賀県)

@
(あらっ、こんなところにお店が。何のお店かしら?)
 ここは小高い山の中。ハナさんは一人でハイキングに来ていたのでした。

A
 木々の間の少し開けた場所にその小さなお店はありました。
 黄色い屋根と六角形の窓。ドアの上には、(ハチミツ屋)と書いた看板が掛かっています。丁度、甘い物が欲しくなっていたハナさんはドアを開けました。

B  
「いらっしゃいませ」
 中から女の人の声がしました。黄色と黒の縞模様のエプロンをした女の人が沢山の瓶の並んだ棚の前に立っていました。フリルの襟のブラウスを着たその人は、どこか外国の絵画に描かれた女王様に見えました。

C  
「どうぞ、ごゆっくりご覧下さい。どのハチミツも丹精込めて作ったものです」

D  
 ハナさんは、棚に並べてある瓶を見ていきました。瓶のラベルにはそれぞれの名前と説明が書かれています。

E  
(品名 ゲンキハニー。ブンブン山のブン太謹製。一舐めで元気100%)

F  
 お隣の瓶のラベルには、
(品名 ワカナリマッセ。一舐めで一歳若くなります。あまり舐めすぎると一気に赤ちゃんに戻ってしまいますのでご注意下さい)
 ハナさんは本当かしら? とクスッと笑ってしまいました。他にも、

G  
(品名 オダヤカハニー。奥様へのプレゼントに最適。いつもニコニコ優しい奥様であり続けます) 
H
(品名 ハニカミーノ。舐めるとハニかんだ表情がとても可愛くなります)

I  
 ハナさんはラベルを読んでいくうちに愉快な気持ちになりました。そして、毎日夜遅くまで仕事続きで疲れていた自分の為に(ゲンキハニー)を買おうと手に取りました。

J  
「お疲れのご様子でしたので、ハチミツ紅茶をお入れしました」
と、店の女の人が窓辺のテーブルに置いてくれました。暖かな陽射しの中で、温かな紅茶を飲みながら、自然が溢れる中でこんなにゆったりした気分になるのは何年ぶりかしら?とハナさんは思いました。久しく空を見上げたり道端の草花にさえ目を向ける余裕のなかった自分を振り返りました。

K  
 今日は久しぶりにハイキングに来て良かったと思いました。すっかり気持ちの良くなったハナさんはいつの間にか眠ってしまった様でした。一体、どの位の時間を眠っていたのでしょうか?

L  
 気付くとそこは、山の中にぽっかりと少し開けた場所の草の上にハナさんは寝転がっていたのです。建っていたはずのお店はなく、目の前には青い空が広がっていたのでした。
 耳を澄ませば蜂の羽ばたきが聞こえていました。
おわり

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