「視点を変えれば…」
昭和女子大学名誉教授 児童文学者
西本 鶏介 先生
このコンクールの素材は、ミツバチやハチミツであっても、視点を変えればさまざまなドラマが生まれるはずです。いちばんつまらないのは、常識的で類型的な作品。どうすれば、そこから脱け出せるかを考えてください。子どもの作品が面白いのは、発想がのびのびしているからです。それでも、回を重ねるごとに個性的な感性や奥ゆきのある作品が、増えてきたように思います。どの部門にも最優秀賞の作品を選び出せたのが、なによりの証拠です。
童話の部は、とび抜けた作品はなかったけれど、入賞作はいずれも読みごたえがあり、作品にこめる作者たちの熱い思いを感じました。
「きらきら」は、ラストがすばらしい。飛びかう紙飛行機の中を舞いあがっていくミツバチたち。不幸な友だちをはげまそうとする、みんなの願いが見事に象徴されています。
「雨の日曜日」は、やわらかな感性を持つファンタジー。ノートに書く話は物足りないけれど、主人公と黒うさぎの交流がきめ細かく描かれ、不思議な気分にさせてくれます。
「ぼくの妖精」は、手なれた書き方で、ぼくの思いがいきいきと伝わってきます。男勝りでもどこか女性らしい彼女が魅力的です。
「はちみつの思い出」は、戦時下の人間愛物語。ノンフィクションスタイルに説得力があり、切なくもあたたかなドラマとして胸を打つ。
「山の神さまのこども」は、母のふるさとで出会った不思議な子どもとのふれあいを通して、自然への感謝をさわやかに描き出しています。
「ハルやベーカリーのお客さま」は、きつねが商店街の人に化けてパンを買いにくる面白い話ですが、古くさい化け方の講義は必要なし。
「ブンブンのひみつ」は、ミツがきらいなミツバチという発想が新鮮。うそのなみだが、友情によって本物に変わるところがすてきです。皮肉ではない子どもならではの面白い話です。
「やさしい みつばち」は、お見舞いにきた虫たちのそれぞれのプレゼントが独創的で、虫の世界のできごとが目に見えるようです。
「まめかぞく おしろの花」は、どこまでも広がっていく作者の空想力に感心しました。少しごたごたしていますが退屈しない話です。
絵本の部は、まだまだ力不足。物語のさし絵という感覚でなく、絵本ならではの表現力を考えてほしいものです。子どもはともかく、大人であるなら文字をきちんとしたい。読みづらい手書きの字を絵の上に貼りつけるのは考えもの。絵本は、文と絵によって成りたっていることを忘れないでください。
「ぼくのしましま」は、文も絵もよく調和がとれた完成度の高い作品。ミツバチが花の上に残したしましまを発見するまでが、テンポよく表現されています。クローズアップされるシンプルな縞模様の絵が楽しく、デッサン力も確かです。
「あくまくま」は、話は平凡ですが、大胆なデフォルメと豊かな色彩感の絵に魅かれます。とりわけ巣箱の前のあくまの画面が印象的。表紙は絵本の顔、もっとしっかり描きたい。
「しろくろちゃんのごろごろ」は、マンガタッチの親しみやすい絵が楽しいけれど、同じような構図が続くのは感心できません。
「ぶんぶんとのさま」は、軽妙であたたかみのある絵が、わがままな殿さまとミツバチの葛藤を描くのに効果的。だが文も文字もまずい。
「ミツバチ、うちゅうにいく」は、ミツバチのロケットがさまざまの新しい世界を見せてくれます。どの画面もくっきりと描かれ、ロケットにのりこんだミツバチたちの表情が、なんともユーモラス。冒険心にあふれた作品です。
「たのしいハチのいちにち」は、ことば遊びのアイディアがユニークなら、六角形の囲いの中で表現する絵もデザイン感覚があって新鮮。兄弟が協力してつくりあげた力作の絵本です。
「ビーちゃんはちみつをとってくる」は、ミツバチの日常を屈託なく描く絵がほほえましい。ビーちゃんは少しまじめすぎるようです。
「1・2の3 ピョーン」は、ストーリー性の豊かな絵本。ミツバチをまねてとぼうとするオタマちゃんのがんばりに拍手。絵もがんばろう。
|