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「昔から狐はあぶらげが好物だっていうのにハチミツパンが好きだなんておかしな狐もいたもんだ」
「だってつるへいさんが発明したハチミツパンはハルやベーカリーのナンバーワンですからね、狐だって一度食べたらやみつきになっちまったんですよ」
そして、ハルさんとつるへいさんにわかったこと、それは月に一度だけ、スズラン商店街の人たちにうまく化けてくるのは、コイズミ写真館のウインドにかざってある(スズラン商店街春の旅行記念写真)を見たんだということでした。
「ハルさん」
つるへいさんがいいました。
「お店をやめるのはあの写真にうつってる商店街のみなさんがお店にきてからってことにしませんか」
「それはつるへいさんがそういうんならそれでかまいませんけど、腰がねえ心配です」
つるへいさんはなあにまだまだ大丈夫ですといいました。
「ねえ、つるへいさん」
今度はハルさんがいいました。
「あたし、もう一枚だけコイズミ写真館にお願いしてかざってもらいたい写真があるんです」
「わかった、ハルさんが若くて、とびっきりの美人だったころの写真だね」
ハルさんは笑ってくびをふりました。
「ちがいますよ、だってあの狐はどうやら男の人にだけ化けるみたいですからね」
「そうか、じゃ、その写真をみた狐がその人になってやってきたらってことにするとして、いったいだれの写真だね」
「ナイショ。楽しみにしててくださいな」
ハルさんはいいました。
「わかりました。狐がやってきてのお楽しみだ」
つるへいさんはウーンと背のびをしました。もうひと頑張り、明日も早起きしてパンづくりです。
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