いよいよ六年生最後の大会を迎えた。チームは順調に勝ち進んで決勝戦まできた。
キャプテンの勇次を中心にみんな士気が高まっていた。
「みんな、がんばれ〜。」
スタメンからはずれたぼくだけど、チームの勝利に貢献したくてベンチから大きな声でチームメイトをはげましていた。
試合は一対〇で負けていた。九回裏二アウト、いよいよあと一人となったとき、監督がベンチから出てきて審判に告げた。
「代打、野田。」
びっくりしたのはぼく自身だ。
勇次がぼくにバットを差し出し、声をかけた。
「健太、思いっきり振ってこいよ。」
「うん。」
ぼくはうなずいてバットをうけとり、その場で素振りした。
「あんた、ホームラン打とうなんて思ってないよね。」
こわい顔をしてブン子がそう言った。あいかわらずその口調はきつい。
ぼくはひとにぎりバットを短く持ってバッターボックスに入った。胸が高鳴った。
(シャープに!、コンパクトに!)
心でとなえながらかまえた。ピッチャーが投げた。
(来た〜〜。)
カキーン
金属音が響いた。鋭い打球がセカンドの頭を越えていった。
「走れ〜。」
ベンチでみんなが叫んでる。
(いける!ヒットになる!)
と、走り出したとたんライトがつっこんできてそのまま捕られてしまった。
試合は終った。相手チームが喜んでいるのを、じっと見ていた。自然と涙がほおを伝った。
(みんな、おこってるだろうな。なんの役にもたてなくって…。)
相手チームに挨拶したあと、ぼくはみんなの顔をまともに見ることができなかった。
「健太、お前惜しかったな。今日チームで一番いい当たりだったじゃないか。」
勇次がそう言っていきなりぼくの手をつかんでみんなの前にかかげた。
「ほら、健太のこの手、まめだらけだ。お前、知らないところでがんばってたんだな。」
健太はブン子を見た。
「あんた、ちいちゃいんだから、あれで上等よ。」
ブン子は言った。かわいくない口調だがぼくにはブン子のせいいっぱいのほめ言葉に聞こえてうれしかった。
「はい、はちみつレモン。」
ブン子がくれたはちみつレモンの甘ずっぱい味がのどを心地よく通っていった。
ぼくはみんなと野球ができたことを幸せに思った。
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