さおりは目を見張りました。
そこに立っていたのは、うさぎでした。
「もしもし」
おもわず、ボタンをおして答えました。
−−−もしもし。さおりさんのお宅ですか。
「はい」
−−−わたしはハチミツ屋の黒うさぎです。
「知ってるよ。ちょっと待ってて」
さおりはもう一度、カメラをたしかめてから、玄関に向かいました。
「わあ、廊下も、あまいにおいがする」
玄関を開けると、水のにおいと雨音が、さおりをいっぱいにつつみました。
「こんにちは」
黒うさぎは頭をさげました。雨をよけるためのコートを着ています。顔からは水がしたたっていました。夜と同じくらい、真っ黒の毛並みでした。大きな黒い瞳が、まっすぐにさおりを見つめます。
「どうぞ」
さおりは黒うさぎを家の中に案内しました。黒うさぎはぬれたコートを脱ぎ、くるくるっと丸めて、ポケットから取り出した袋にしまいました。
「すぐに、帰りますので」
黒うさぎは一言ことわってから、家にあがりました。黒うさぎの背は、さおりよりわずかに小さいようでした。もちろん、長い耳をのぞいてのこと
です。
さおりと黒うさぎは、台所の机に向かい合って座りました。
「びっくりした。だって、おはなしをつくっていただけなのにーー」
黒うさぎの見事な黒い毛並みの中で、やはり同じように真っ黒い瞳が、きらりと光りました。
「やっぱり!」
黒うさぎは力強い声を出しました。
「あなたが〈おはなし屋〉だと聞きつけて、ここにやってきたのです」
「おはなし屋?」
「はい。ああ、これは砂糖草ですね!」
黒うさぎはノートを手にとって、叫びました。その声は、なぜだか悲しそうでした。
「ああ、わたしのこともかいてある……それに、白うさぎのことも!」
黒うさぎは、すんと鼻をならしました。
|