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「ほんとは いじめたくなかったんだ。」
まーくんは、家に帰ってから、ぼそりと言った。
「しかたないじゃん。ぼくのほう、ぜんぜん見てくれないんだもん。ぜんぜん、しゃべってくれないんだもん。あゆちゃんが、わるいんだよ。」
まーくんは、ぶつぶつ言いながら、学校であったことを、思い出した。
二時間目が終わってすぐ、ぼくは、
「ドッチするもん、この指とまれ。」
って、教室中に聞こえるくらいの声で、さけんだ。男の子が数人、女の子も二・三人、よってくる。あゆちゃんと仲のいい子も、
「うん。やるやる。」
って、指つかみにきた。
てっきり、あゆちゃんも来てくれると思っていたのに、あゆちゃんは、自由帳を取り出して、絵をかきはじめたんだ。まったく、むしされて、悲しくて、はらがたったんだ。それで、あゆちゃんの自由帳に、ぐるぐるぐるって、思いっきり書いた。あゆちゃんが、ぼくを見る。はじめて、目があったんだ。うれしくて、ぼく、にやってする。あゆちゃんは、泣き出す。ぼく、びっくり。どうしていいかわからないから、運動場に走っていったんだ。
三時間目、あゆちゃんのことが気になって、ちょこちょこせのびする。三つ前にすわっているあゆちゃんはちらっと、うしろすがたしか見えない。その後の休み時間も、あゆちゃんを見たいけれど、なんだか見るのがこわくて、すぐ外にとびだした。いつもは、おかわり三回する給食も一回もしなかった。入学して、はじめてのことだ。今日のメニューは、カレーライスとフルーツゼリー。ぼくが、おかわりの手を上げないから、先生まで、ふしぎそうに、ぼくを見ていた。
ぼくだって、こんな気持ちになること、あるんだ。あゆちゃんを泣かしちゃったこと、先生には、ばれていないみたい。ほっとしたけれど、先生とは、目があいたくない。そうじの時も、ほうきをふりまわしたり、ぞうきんをなげたりして、先生や女の子に注意されるのが、あたりまえの、ぼくだけれど、今日は、自分でもびっくりするくらい、おとなしく、ほうきを動かしていた。みんな、目を丸くしていたけれど、ぼくだって、こんな時、あるんだ。
「今日も、サッカーしようぜ。」
って、あきらたちが、さそってくれたけれど
「今日は、ちょっと、やめとくわ。」
って、より道もしないで、ふつうに帰ってきたんだ。あーあ、こんな気持ち、はじめて。
「あゆちゃん、ぼくのこと、きらいになっちゃったかなあ。おこってるかなあ。どうしよう。」
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