ようこそ ゲスト
小中大
ごあいさつ
創業の精神・企業理念
事業内容
会社概要
私たちの取組み
みつばち文庫
ミツバチの童話と絵本のコンクール
エコスクール
みつばち教室
文化セミナー
植樹活動
ネパール植樹活動
内モンゴル植樹活動
子どもたちの子どもたちの子どもたちのために。
環境への取り組み
風力発電システム
ソーラーシステム
みつばち牧場

新着情報
採用情報
お問い合わせ
ショッピング
みつばち広場

当サイトはTRUSTeプライバシープログラムのライセンシーです。

みつばちの童話と絵本のコンクール


「ミツバチ、鼻にはいった!」
一般の部 佳作
白川 ミコト (愛知県)

――――――――――――――――――――

鼻の穴に、ミツバチがもぐりこんだ。
 ぼくの鼻ではなく、ママの鼻の穴だ。ママはれんげ畑のにおいをくんくんと、鼻の穴をひろげてかいでいたのだ。あかむらさき色の小さな花に、顔をうずめるようにして。
「ケン。あなたもかいでみたら?あまいにおいがするわ」
 ぼくが首をよこにふると、一匹のミツバチが、すごいはやさでとおりすぎた。なにかをおいかけているかのように。そして、すぽっとママの鼻の穴にはいった。
「むむむっ…」
 一瞬、ママはかたまった。それから頭をふったり、とびはねたり、ミツバチを鼻の穴からおいだそうとした。ところが、ミツバチは鼻のおくまでもぐってしまった。
「ぶぶぶぶぶぶぶ…」
 ふいに、れんげ畑のむこうがわから、ミツバチの集団がやってきた。ぐるぐると、あたりを見まわして、だれかをさがしているようだ。ぜんぶで八匹。
「あの子たち、あたしをさがしているわ」
 突然、ママが口をひらいた。
「あたし?」
 ぼくは首をひねった。
 ママは、自分のことをあたしなんて言わない。かならず、わたしと言う。本と自然が大好きなおじょう様だ。そして、とても気がつよい。結婚しないで、ぼくを産んだ。
 だから、ぼくには、パパがいない。
 でも、そのことで、ママをうらんだことはない。ママはじまんの腕をふるって、毎日の食卓をとてもにぎやかにしてくれる。からっぽのいすも気にならないほど。
「あたしの名前は、ミツバチのキャッチ。あなたの名前は?」
 ママは銀色のメガネをかけなおして、ぼくの顔をのぞきこんだ。これはもう完全におかしい。ぼくの名前をきくなんて。メガネのおくのママの目は、ママじゃない。
「ぼくは、ケン。正確には、ケンタロウ」
「ふーん。としはいくつ?」
 ママは次々と質問する。
「どこからきたの? ここの土地の人じゃないでしょう? なまりがないもの。こんな田舎になにをしにきたの?」
 ぼくはできるかぎり質問に答える。としは十二才。きのうの夜、東京から夜行列車でひっこしてきたばかり。けれども、ここに来た目的は、ぼくにはぜんぜんない。
「ママのわがままさ! ママがどうしても田舎で暮らしたいって」
 ぼくは思い切って口にした。目の前のママは、ほんとうのママではないのだから。ぼくは東京の小学校を好きにはなれなかったけど、嫌いでもなかったのだ。それなのに…。
「へー。ママと二人で、田舎の暮らしにあこがれてやってきたの!」
 キャッチと名乗ったママは感心している。
「あなたのママ、センスがいいわ。ここでの暮らしはさいこうよ。空気もおいしい。水もきれい。養蜂場もあるから、しんせんなはちみつも手にはいるわ」
「おまけに、無農薬の野菜も売っているんだろう?」
 ぼくは口をはさんだ。
 ぼくには、食べられないものがたくさんある。にわとりの卵、バターに、牛乳。まだまだある。もし食べると、体中にぶつぶつができてしまうのだ。
 だから、ママは、野菜も無農薬にこだわっている。もちろん、おかしだって、砂糖とバターをつかわずに、はちみつと乾燥フルーツをいれた手作りだ。
「田舎の暮らしのみりょくについてなら何回もきかされたよ」
 ぼくはうつむく。
 ママのお仕事は、もの書きだ。原稿用紙のマスメをたくさんの文字でうめてポストに入れる。東京じゃなくても、どこでだってできる。でも、ぼくの野球は…。 「あーあ!」
 声は、キャッチのものだった。
「人間の鼻の穴になんてはいったから、野球のつづきができなくなっちゃったわ!」
「野球?」
 ぼくがたずねると、
「えぇ、花粉だんごって知っている?」
 キャッチはあぜ道を歩きはじめた。
「知らない」
 ぼくもいそいであとをおう。
「あたしたち、ミツバチはね、花粉をバスケットにいれてもちかえるのも仕事なの。そのときに作るのが花粉だんごよ」
 キャッチは、手のひらでおだんごをにぎるしぐさをした。
「養蜂場は、あの山のふもとにあるわ」
 キャッチがゆびさした山は、ぼくらの背中のほうにある。
「ほんとうは、あたしたちは、とてもはたらきものなのよ。でもね、毎日、何回もハチの巣と花とをおうふくするから、そのうち、だんだんあきてきちゃう…」
 キャッチはにやりと笑った。
「そこで、草野球よ!」
「野球するの?」
「えぇ、毎日」
 キャッチはうなずく。
「あたしたちは、さぼりガールズって呼ばれているの。つまり、仕事さぼりの九人組っていう意味。野球は九人でするでしょう?」 「そんなことくらい知っているよ。ぼくも野球をしていたもん」
 ぼくはすねた。すると、
「ははぁーん。ケン、さては、あなた万年補欠組みでしょう?」
 キャッチは、ぼくの顔をのぞきこんだ。ほんもののママとだって、こんなに顔を近づけて話をしたことはない。ぼくは、思わずしりぞきながら、
「ひかえのピッチャーだって言ってくれるかな。背番号は十一だよ」
 キャッチにもんくを言った。
「あら、ケンはピッチャーなの! あたしはキャッチャーよ!」
 突然、キャッチは走りだした。まるで春一番のようなはやさだ。そして、きゅきゅっとブレーキをかけてとまると、水色の空をあおいだ。
「オーライ!」
 キャッチは声をあげた。ほんとうにボールが見えているかのように。
「かんたんなキャッチャーフライをとろうとしていたら、きゅうに、あたりが暗くなったのよ。すっかりボールを見失ったけど、あたしはあきらめなかった」
 キャッチは、えへんとむねをはった。
「なにせ、ノーアウト満塁から、やっとツーアウト満塁になったの。ここでとらなければピッチャーにもうしわけないわ。そこで、思いっきりとびこんだのよ」
「ママの鼻の穴に?」
 ぼくは笑いをこらえた。
「それはあくまでも結果。とびこんだことに意味があるのよ」
 今度は、キャッチがすねた。
 



――――――――――――――――――――
→ 次のページへ
トップへ

フリーダイヤルでもご注文・お問い合せを承ります。詳しくはこちらをクリック
TRUST-e 山田養蜂場WebサイトはTRUSTeのライセンシーです。
山田養蜂場Webサイトでは個人情報保護のため、SSL暗号化通信を採用しております。
JADMA 山田養蜂場は、(社)日本通信販売協会の会員です。
株式会社山田養蜂場(岡山県鏡野町) Copyright(C)2008 Yamada Bee Farm All Rights Reserved.