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サヤは毎日、夜中に目をさまして泣く。
「ぺっちゃんこが見たいよう。ぺっちゃんこだよう」
すると、ハルばあちゃんもぱちっと目をあける。どんなに眠くても、サヤをおんぶして夜の散歩にでかける。
ハルばあちゃんの背中で空を見ながら、サヤは何べんもぐずぐずとくり返した。
「ぺっちゃんこが見たい。ぺっちゃんこだよ」
ぼくはハルばあちゃんの足もとをころころついてまわりながら、ふんふんと鼻を鳴らす。
夜の匂いってあるんだよ。つめたくて、ふわんとして静かな匂いなんだよ。
そのふわんとした匂いをいっぱい吸いながら、ハルばあちゃんの子守唄を聞いた。ハルばあちゃんは、背中を揺すりながらそっと唄った。
ねんねんこーろ こーろのやまのうさぎは
なぜにおみみがながいの
びわのはをくわえて
それでおみみがながいの……
静かになったと思ったら、いつのまにかサヤは、ハルばあちゃんの背中ですうすう寝息を立てている。
そのまましばらく庭を歩いて、ハルばあちゃんはぼくに話をしてくれた。
「ぺっちゃんこって言うのはね、お月さまのことなの。お月さまにはウサギがいて、おもちをぺっちゃんこ、ぺっちゃんこついているんだって。昔、ハルばあちゃんがお母ちゃんから聞いて、サヤのママに話してあげたの。この子守唄も、ママに唄ってあげたの。サヤもママから聞いていたんだねえ」
空に、月は出ていなかった。天の川が見えた。星あかりが地面におちて、青い影をつくっていた。
「サヤはパパとママにさよならが言えなかったの。だから、海賊をやっつけに行ったり、おばけ退治に行ったなんてこと言うんだよ」
ハルばあちゃんは、どっこいしょっと重たくなったサヤをゆすりあげた。
「事故があった日、サヤはここでハルばあちゃんとレンゲの花をつんでいた。あれから一年がたったんだね」
風にはちょっぴりレンゲの匂いが混じっていた。ミツバチの巣箱はとっても静か。ミツバチも夢を見るのかな。
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