| ぼくはホタカ。ツキノワグマだ。ハルばあちゃんの家で暮らしている。村の近くで迷っていたぼくを助けてくれたのは、隣に住んでいる伝でんじいちゃんだ。
ぼくの毛皮はまっ黒だけど、首のまわりとひたいのところに、白い毛がちょんぼりっとはえている。
「ひたいに流れ星、首に三日月か。こりゃあ、この、やんちゃ坊は山の主ぬしになるぞ」
伝じいちゃんが言った。
「あんまり甘やかすなよ。山にもどすなら、なるべく早いほうがいい。けがが直ったらすぐにだ」
すると、ハルばあちゃんが答えた。
「もうおそいかもしらん。こんなになついてしまったもの」
「おそいことないさ。なあ、ホタカ。山がおまえのふるさとだものな」
伝じいちゃんはそう言って、ぼくの目をじいっとのぞきこんだ。
日にやけたしわだらけの顔。しわの間にあるのは、あったかくて
大きな目だった。いたずらっぽく楽しそうで……
笑っているけど、伝じいちゃんの目は大まじめだった。
「いい子だ、ホタカ。だけど、お前はあっというまにでかくなっちまって、わしらの手におえなくなるからなあ」
ぼくは伝じいちゃんの手をべろっとなめた。
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