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みつばちの童話と絵本のコンクール


「きんいろのアメ、
ぎんいろのメガネ」
一般の部 優秀童話賞 藤原 あずみ(千葉県)

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 そばで見る野原は、色んなかたちの花たちがはっきりして、よりきれいだった。
「ねえ、ここって今国語でならってる教科書の絵と、そっくりだと思わない?」
 コトコはスキップしそうないきおいで、前を行くトンボに話しかけた。
「いいなあ山田くん。こんなきれいなとこに住んでるなんて」
「ぼくの家は、ここじゃないよ」
「え?」
 トンボは少しだけ、歩く速度をゆるめた。
「ここから学校まで、毎日通えるもんか。もっと学校の近くの、茶色いマンションだよ」
 それなら知っている。見上げると首が痛くなるほどの、のっぽマンションだ。
「ぼく、父さんと二人ぐらしなんだ。今日は父さんが出張だから、おじいちゃんちにとまりに来たってわけ」
 コトコは、またトンボがキカイみたいなしゃべり方になっているのに気づいた。
 そっか、トンボもほんとは、さびしいんだ。
 家ではほとんど一人ぼっちで。学校では友だちがいなくて、一人ぼっちで。おじいちゃんとおばあちゃんといられるここだけが、トンボにとって楽しい場所なんだ。
 あのアメがおいしかったのは、ハチミツのせいだけじゃない。おばあちゃんがトンボを元気づけようと、いっしょうけんめい愛をこめて、作ってくれたからなんだ。
 コトコは、後ろからトンボの手をぎゅっとにぎった。
「ねえ、 友だちになろうよ!」
 またまたゆでダコになってしまったトンボを、コトコは真剣な目で見つめた。
「あたしも、ママと二人ぐらしなの」
 ママが仕事をがんばっているのは、えらいなと思う。でもやっぱり、どうしても消えないさびしさが心の底にあった。
 だから学校では、そのうめあわせをするように、みんなとさわいだり遊んだりする。そうすれば、一日の半分は楽しく過ごせたことになる。
 逆に、トンボは一日の半分を、さびしく過ごしているということだ。
 コトコは鼻の穴をふくらませて、胸をはった。
「あたし、山田くんに話しかけてもらって、うれしかったよ。ちょっとしおれてたけど、アメ食べたら元気になったよ。あたしに元気になってほしくて、アメくれたんでしょ?」
「う……うん……」
 トンボはコトコのいきおいに押されて、すっかりおとなしくなっている。
 何か、かわいい! 
「だからあたしは山田くんが、学校で元気になれるようがんばる! ね? はい、 友だちの指きり」
 トンボは言われるまま、コトコの小指に自分の小指をからめた。
 指をきって、二人はまた歩き出した。
「あれがハチの巣箱。そこのぼうしかぶって、上着着て」
 見ると、草をかりとった地面に、十ばかり四角い木箱がならんでいた。周りにちらほらとミツバチがとんでいる。たくさんの羽音で、耳がざわざわするようだ。
 コトコは木にかけてあった、アミ付きむぎわらぼうしをかぶり、たぶんおじいちゃんのだろう、白い上着に手を通した。ぶかぶかだ。
 同じかっこうをしたトンボが、手まねきする。コトコは近づいて、巣箱の中をのぞいた。
 箱の中には、木のわくでかこったアミがならんでいる。トンボが手ぶくろをした手で、一枚を少しだけ引き出した。うなりが、いっそう大きくなった。 動き回るミツバチたちの下に、規則正しい図形のような、きれいなハチの巣が見えた。
「うわぁ、きれいだねえ」
「そんなに近づいちゃあぶないよ」
 トンボはそっと、アミを巣箱にしまった。
「いつもお手伝いしてるの?」
 コトコはなごりおしそうに、巣箱のすき間をのぞいて、トンボに引っぱられた。
「うん、少しずつだけどね。ハチミツをしぼったりするの、楽しいよ」
「えーっ、いいなあ。あたしもしたーい!」
「まだまだ、一回来たくらいじゃさせてあげないよ」
 トンボはいたずらっぽく笑った。
 おばあちゃんはおみやげに、大きなビンにつめたハチミツと、ふくろいっぱいのアメを持たせてくれた。
「おうちに電話しなくていいのかい?」
 空はオレンジ色とうすむらさきをおりまぜて、夕ぐれを過ぎようとしていた。
「うん、うちのママ、まだ帰ってないから」
 おばあちゃんはためいきをついた。
「そう。じゃあ気をつけてね」
 コトコはおじいちゃんのトラックにのると、おばあちゃんのとなりのトンボに声をかけた。
「じゃあ、また明日ね。トンボ!」
 トンボは一瞬、ふしぎそうに首をかしげて、あっとひらめいたのか、ぎんぶちメガネを指さし、手をふった。とてもいい笑顔で。

 それからコトコは、なぜか今日に限って早く帰っていたママに、こっぴどくしかられた。
 おこってすっきりしたのか、そのあとママは、コトコの話を楽しそうに聞いてくれた。もちろん、おばあちゃんのアメを食べながら。
「ママも日曜日、そこに行ってみようかな」
「ほんと? 行こうよ!」
 コトコはあの野原に、ママとねころがるのを想像して、うれしくなった。
 ねえ、このアメはまほうのアメじゃない?
 トンボ、じゃなくって、ユウちゃん。


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