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みつばちの童話と絵本のコンクール


「空のように青いまほうの足」 子どもの部 佳作


 ドミーが踏んだのは「地雷」というおそろしい鉄のかたまりでした。地雷は、むかしカンボジアが戦争をしていた時に埋められたものです。地雷は、体だけではなく、人々の心まで傷つけてしまいます。だから「悪魔の兵器」とよばれています。今もカンボジアや多くの国に地雷はたくさん埋められたままなので、毎日たくさんの犠牲者が出ています。
 その日から、ドミーは何日も目をさましませんでした。やっと目をさましてからも、なかなか元気が出ませんでした。でもお坊さんたちのおかげで、少しずつ元気をとりもどしていきました。

 何日かたったある日のことです。今日のカイは、何だかそわそわしておちつきがありません。ジュリ姉さんの言うこともうわの空で、お昼ごはんを食べ終わると、いちもくさんに病院へ向かって飛んで行きました。今日はやっとドミーに会える日なのです。
 一番窓ぎわのベッドにドミーが静かに寝ていました。ドミーは、命は助かりましたが両足を失ってしまいました。カイは開いている窓からそっと中へ入りました。ドミーの小さな白い枕が涙でぐしょぐしょにぬ れていました。カイは小さな声で話しかけたり、歌を歌ってみましたが、ドミーの涙は止まりませんでした。カイにできることは、ただだまってそばにいることだけでした。
 何日も何日もかかって、やっとドミーはベッドの上に起き上がれるようになりました。カイは毎日毎日ドミーに会いに行きました。ある日カイは、羽の中から小さなキャンディーを取り出しました。
「これをなめればきっと元気が出るよ。」
金色のそのキャンディーは甘いハチミツの匂いがしました。
「うん、がんばるよ。ありがとう。」
ハチミツキャンディーのおかげで、ドミーは少しずつ笑顔も取りもどしていきました。

 そして一年後、ドミーにうれしい知らせが飛びこんできました。村長さんの友だちである日本のハチミツやさんが、ハチミツの売上げで義足をプレゼントしてくれるというのです。
「もしかしたらぼくはもう一度走れるようになるかもしれないんだ。」
ドミーの心は、期待で大きくふくらみました。そして、その日さっそくカイに、そのすてきなニュースを話しました。
「カイ、義足をつけたら、もう一度走れるようになるかもしれないんだ。」
「義足?何なの?それ。」
「ぼくみたいに足がない人でも、歩いたり走ったりできる『まほうの足』のことなんだよ。でも、慣れるまでは大変らしい…」
「良かったね。楽しみだね。ドミーならきっとがんばれるよ。これからも、キャンディーをたくさん届けるからね。」

 一ヶ月後、日本からついに義足が届きました。まるでカンボジアの空のような澄んだ青色の義足でした。
「これならきっと走れるようになる!」
ドミーは勇気がわいてきました。そして次の日からさっそく練習が始まりました。義足を足に取り付けた時、ドミーはワクワクとドキドキでいっぱいになりました。でも立ち上がったとたん
「痛いっ!」
ものすごい痛みが太ももを走りぬけて、思わず、座りこみました。
「やっぱり駄目なのかな…。」
 ドミーはがっかりしながらつぶやいて、ポケットに手をつっこみました。すると何か丸いものが指にあたりました。それはカイがくれたキャンディーでした。
「そうだ。ぼくはまだ何もやっていないじゃないか。」
ドミーは口の中にキャンディーをほおりこんで、もう一度立ち上がりました。痛みは体中を走りましたが、今度はふんばることができました。一歩、そしてまた一歩。次の日もその次の日もドミーは練習を続けました。
 痛みに負けそうになったとき、もう練習をやめたくなったとき、枕もとにはいつも小さなキャンディーがココナッツの葉に包んで置かれていました。
 今日はついに最後の練習の日です。そしてドミーにとっての旅立ちの日でもありました。ドミーは大好きな家族やカイたちの元を離れて、遠い町の大学に通 う決心をしていました。ドミーは今ならどんなことでも、やりとげられる気がしていました。

 十年後…。 太陽がさんさんと輝いて大地を照らしています。道のむこうから、ひとりの青年が走ってきました。ドミーです。大学生のドミーはひさしぶりに村へ帰ってきたので、村長さんに会いにきたのです。
「村長さーん」
ドミーの声を聞き、村長さんが奥から出てきました。
「おおドミーか。ずいぶん久しぶりじゃな。まぁ入るがいい。」
昔と全く変わらない村長さんですが、歩き方がぎこちなくなっていました。村長さんはお茶を入れながら話してくれました。
「実を言うとあの後、わしも地雷にやられてしまったのじゃ。」
その言葉を聞いたとたん、ドミーはとても悲しい気持ちでいっぱいになりました。
「どうすれば地雷はなくなるのだろう。」
ドミーがつぶやいた時、一匹のミツバチが目の前にやってきました。
「あぁ君はカイだね!」
ドミーが手を差し伸べると。
「私はカイじゃないんです。私はカナ。カイは私のおじいちゃんの名前です。」
と言いました。
「えぇ?いつのまにかそんなに時が過ぎていたのか。」
ドミーの心にたくさんの想い出がよみがえってきました。カイに初めて出会った日の悲しいできごと、カイたちが助けてくれたこと、カイがくれたキャンディー…。
 そして、ドミーはカイが言ったある一言を思い出しました。
「ぼくたちミツバチは、ハチミツを見つけるときによく鼻を使うから鼻はとってもいいんだよ…。」
そして、思いついたのです。
『これからは、ミツバチたちに協力してもらって地雷を探せばいいんだ。そしてゆっくりひとつずつでも、地雷を取りのぞいていけばいいんだ。』
 その夜、ドミーの家にたくさんの人が集まりました。ドミーは、家族や村長さんやお坊さんの前で、昼間思いついたことを話しました。みんなとても真剣にドミーの話を聞いてくれました。そしてお坊さんは言いました。
「そうだ。ドミーにはこれからも、ハチミツのようにねばり強く、そしてキラキラとかがやいて生きていって欲しい。」

 ドミーは今も世界のどこかで、ミツバチたちといっしょに明るく生きています。この世界から地雷がすっかりなくなる日まで、がんばれドミー!青いまほうの足で…。





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