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みつばちの童話と絵本のコンクール


「お腹の中のイモ畑」 一般の部 優秀童話賞 住吉 ふみ子 (広島県)

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 それからしばらくすると、腹の中からたつやんの、まのびした歌声が聞こえてきました。
  ねんねんころころ いもころろ
  おいものふとんは おやまのつちよ
  つちのふとんは あったかいか
  あったかけりゃ いいこでねんねしな
 たつやんは、イモに子守歌を歌っているのです。
「おいおい。イモに子守歌なんて、わかるのかねえ?」
「わかるともよ。わかって気持ちようなって、ぐっすり眠れて、のびのびした、ええイモになるんじゃ。」
「ふうん。そんなもんかねえ。」
 うわばみも、何だか気持ちがのびのびしてきました。
  ねんねんころころ いもころろ
  いもをだくのは  おやまのつちよ
  ねんねんころころ つちころろ
  つちをだくのは うわばみさんよ
  うわばみだくのは だれじゃろか
  ひろーいひろーい おそらじゃろうか
 たつやんの子守歌はいつまでも続きます。
 聞いているうち、うわばみも眠くなりました。水やらお日様やら飲んで、くたびれました。たつやんの子守歌を聞きながら、イモと一緒に寝てしまいました。
 そのうち、たつやんも歌い疲れて寝てしまいました。それで、子守歌は、グワアア、ゴワアアという、豪快ないびきに変わってしまいましたが、うわばみは、目を覚ましませんでした。いびきにうまく乗っかって、体を伸ばしたり縮めたりしながら、波乗りスタイルで眠り続けました。


 それから、ずいぶんと日が過ぎました。
「うわばみーうわばみー。」
 たつやんの呼ぶ声で目を覚ました時、あたりはもう秋でした。
「イモができたぞ。イモができたぞ。ありゃイモだけじゃない。蜂蜜が酒になっとるぞ。木のうろの蜂蜜が酒になっとるぞ。」
 腹の中から、たつやんが、浮き浮きした声で言います。
「何、酒だって!」
 うわばみはゴクリとつばを飲み込みました。
 うわばみは酒が大好きなのです。
「うわばみが水を飲んでくれた時、木のうろに水が入って、蜂蜜が薄まったんじゃな。それから、お日様も飲んでくれたから温度も上がって発酵したんじゃろうよ。」
「そしたら、何かい?その酒は、このおれが作ったってことかい?」
「そうとも、これはうわばみが作った酒じゃ。どれ、一口。うめえ。甘うてうめえ。」
「ちょちょっと待て。その酒はおれが作った酒じゃないか。勝手に飲むなー。」
 うわばみは叫びました。
「すぐ、おれもそこへ行くからな。それまで飲むんじゃないぞ。」
 うわばみはきがきではありません。大急ぎでたつやんの所に行こうとして、はたと考えこみました。
「どうやったらお前の所に行けるんだい?」
 たつやんも考えこみました。
「ものごとは順序だてて考えんとな。そもそもわしが、ここにいるのは、うわばみのあんたが、わしを飲み込んだからじゃ。ということは、あんたがあんたを飲み込んだら、あんたもここに来れるんじゃないか?…」
「本当だ。おれがおれを飲み込んだらいいんだ。」
 うわばみは、うなずきました。それから口を大きく開けて、えいっと自分の口にとびこみましたが、食道の途中で止まってしまいました。
「どうして、そんなところで止まるんだい?」
「止まってるんじゃない。つまったんだ。」
「つまっただって。なんと、大きな頭だこと。つまるんじゃあつまらんから、こっちへくるのはやめるかい?」
「こ、こんな時につまらんしゃれなんか言うな。やめるも何も、つまってるってことは、前にも後ろにも進めねえってことなんだよッ。く、苦しい。とにかく、進みだしたんだから、前に進むしかないんだ。おい、たつやん。お前ねえ、ぼやっとしてないで、そっちからおれの頭をひっぱってくれよ。おれがおれを飲み込んだらいい、なんて言ったのはお前なんだからね。ぐうーっ、ぐるしいー。」
「よし、わかった。こっちから引っ張ってやるからな。うわばみ、頑張れよっ。」
 たつやんは、あわてて、うわばみの頭をつかむと綱引きのように力一杯ひっぱりました。
 よいしょこらしょ…
 うわばみの頭はずりずりと引っ張られます。
「いててて!いてて!」
 うわばみは悲鳴をあげました。
「大丈夫か。」
 たつやんはひっぱるのを止めました。
「止まるな!こんなところで止まられちゃおれが困るんだぞう。いいから前に進めーっ。い、息がつまる。早く前に進んでくれーっ!」
「わ、わかった!」
 たつやんは、うわばみの頭を肩に背負うと、一、二、の三でダッシュをかけてかけだしました。
「うわばみ、歯をくいしばれー。一時の辛抱だぞー。」
 うわばみの頭を背負ってたつやんは走りました。うわばみのお腹の中を、びゅんびゅんびゅんびゅん、全速力で走っているうち、とうとう、たつやんは肛門から飛び出してしまいました。肛門から飛び出しても、たつやんは止まりません。勢いがついて、もう止まれないのです。うわばみの頭をかかえて走り続けるので、うわばみの体は、くるっと裏返ってしまいました。


 その途端、
 山一面がイモ畑になりました。うわばみのお腹の中で育ったイモが山一面 にころがっていったのです。さすが千本のイモのつるからできたイモです。一万個くらいはありそうです。どっちを見ても、
イモイモイモイモ…
「これこそ、芋を洗うような混雑じゃのう、うわばみ…ありゃ、まあ!」
 うわばみは裏返ったまま、空気が抜けたゴム風船のようにのびていました。
「うわばみーしっかりせい!」
 たつやんは、うわばみの体をもう一度裏返して体を揺すりました。
 目をあけたうわばみはたまげました。
 元気な子供の顔のように、赤くてまるまるのイモたちが、ころころころころ、山の上に山盛りにころがっているのです。
「うわばみの腹の中で育ったイモだぞう。」
「こんなにたくさんのイモが、おれの腹の中にあったのかあ?!…」
 うわばみは、一万個のイモが自分のお腹の中にある様子を想像して、うーんとうなり、また目をまわしてしまいました。
 日が西に傾いて、空は薔薇色の夕焼けです。
 うわばみとたつやんのお祝い会が始まりました。ごちそうは、焼きイモと蜂蜜の酒。
 木のうろの蜂蜜酒はうわばみが裏返った時にもこぼれませんでした。それどころか、一口飲むと一口分、湧いてくるのです。不思議な酒樽のような、木のうろです。
 うわばみは張り切りました。
「腹がすかすかで、いくらでも入るぞう。よおし、今日は飲むぞう。」
 顔を夕焼け色に染めながら、うわばみは、ぐいぐいぐいぐい、蜂蜜酒を飲みました。
 そんなうわばみを、楽しそうに眺めながら、
 たつやんも、
 ほかほかの焼きイモをほおばりました。



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