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八 飛行練習の日
内勤バチの生活も、ようやく一週間目をむかえた。わたしたちのように、お城の中だけで働いているミツバチを内勤バチという。Qの一みたいに、外で働くハチは外勤バチ。
でも今日は、生まれて一週間めの内勤バチが、お城の外にでて飛行練習をする日だ。
わたしがここにやってきた日、からだのカラをこすっていたQ部屋の仲間たちは、
めずらしく、朝からよりあつまっておしゃべりしている。まだみたことのないお城の外にでるのが、きっとうれしいんだ。
わたしは、外のことならよく知っているけれど、やっぱり外にでるのはわくわくする。おまけに、今日、Q部屋のリーダーはQの一なんだ。
太陽が高くのぼった明るい時刻、わたしたちはお城の前の草原にあつまった。
「うわーあ、まぶしい!」
わたしがはじめてミツバチになった日より、陽ざしはうんと強くなっている。
草原には、それぞれの部屋のリーダーにつれられた内勤バチが、次つぎあつまってくる。みんながそろったところでざっと数えてみたら、およそ三百ぴきいじょう。
「さあ、みんな、頭をお城のほうへむけて、いっせいに飛びあがってごらん。そして、お城の位置をおぼえたら、自由に飛行練習をつづけてください」
Qの一が、Q部屋のわたしたちにいった。
あっちでもこっちでも、リーダーたちが同じことをいっている。
「よーい!」
どこかでかけ声がかかる。
「スタート!」
ブルルン ブルルン
グワグワ グワッ
たいへんなはねの音をたてて、わたしたちは飛びあがった。
みんながいっせいに、お城のほうへ頭をむけてひとまわりすると、
「今度は太陽にむかって、直進よーい!」
下からの声に、みんなは高く高く飛びあがっていった。
わたしも、空高くまであがって、自由に飛行練習をしていたら、うしろで大きなはねの音がした。
ブワーン ブワーン
ふり返ると、大目玉の雄バチがせいぞろいして追っかけてくる。
「キャーッ」
おもわず叫んだわたしは、みるまに下へむかって落ちはじめた。
わたしの叫び声におどろいたまわりのミツバチも、いっしょに落ちてきたけれど、とちゅうでうまくはねをふるわせて、また飛びあがっていった。
でも、わたしはとうとう、草原についらくしてしまった。
Qの一がかけてきた。
「どうしたの。あなたは飛ぶのがはじめてじゃないでしょっ」
「雄バチが、追っかけてきて・・・・」
「ばっかねえ。雄バチがあなたを追っかけたりしないわよ」
「え」
「雄バチは、そろって結婚式にでかけたの」
Qの一は、むこうのほうにいる外勤バチに気づかれないように、小声ではなしてから、落ちたときみだれたわたしのはねをととのえてくれた。
そのとき、お城の塔の上でにぎやかな鐘が鳴りひびいた。
「あ、女王さま!」
「女王さま、おめでとう」
「女王さま!」
「女王さま!」
「おめでとうございまあす」
むこうのほうにいた外勤バチたちが、塔をみあげて、てんでによろこびの声をあげている。
「いよいよご結婚ね」
「ええ、これでわたしたちのお城も安心よ」
「さあ、これからが、いそがしくなるわ」
外勤バチたちは、うれしそうにことばをかわしあっている。
お城の塔のてっぺんでは、青いレンゲの飾りがぱっと開いて、中から女王バチが、いきおいよく飛びたった。
水晶のようにきれいなはねに、太陽の光りをいっぱいにうけて、女王バチは空の上高くまいあがっていく。
「うわーあ」
わたしも、すっかり感激して、
「女王さま・・・・」
おめでとうと叫びかけたら、Qの一にぐっとにらまれた。
「あなたは、まだそんなことをいわないの」
「どうして?」
「ほんとうのミツバチなら、それくらいのこと、聞かなくてもわかるんだけど」
「・・・・?」
「さあはやく、もう一度飛んでらっしゃい」
でも、女王バチのあとにだれもつづかないのをふしぎにおもったわたしは、またQの一にたずねた。
「どうして、女王さまひとりでいくの。お供の働きバチは?」
「女王さまの結婚はね、お空のどこかでひっそりとなさるの。さっき飛びたっていった雄バチのうちのだれかとね」
「え、だれかって? じゃ、ほかの雄バチはどうなるの」
すると、Qの一はとつぜんふきげんになり、
「あなた、今日はなんの日!?」
と、大きな声でいった。
むこうにいた数ひきの外勤バチが、へんな顔つきでわたしたちをみたからだ。
わたしはあわた。
「ひ、飛行練習の日です」
「では、すぐに、ヨーイッ!」
Qの一は、むこうのみんなに聞こえるように大きくいった。
わたしはすぐはねにエンジンをかけ、ふたたびお城のまわりの草原から飛びたった。
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