ミツバチの童話と絵本のコンクール

フリンビーの花のみつ

受賞岡村 優里 様(岡山県)

 お日様がキラキラかがやいて、そよ風がふいてくる。小鳥たちがさえずり、あまい香りがただよってくる。すんだ青い空の下に小さな赤い屋根の家がある。その周りには、きれいな花がたくさんさいている。
 そこに、一人の女の子が手をふっている。この子は、私の妹、はる。三才だ。はるは、元気で、走ったり、とんだりするのが大好きな女の子だ。
 私の名前は、なつ。はるとは反対に、家の中で静かに読書をしたり、手紙を書くのが好きだ。
 だから、私とはるはよくけんかになる。私が読書をしていると、自作の歌を大声で歌って通るはる。私の本の世界は、とぎれてしまうのだ。けんかをする度に、私は、こんなはるを少しぎ問に思っている。
 時は過ぎ、お日様がギラギラと、赤い屋根をてらしている。もう夏休みだ。はるは、お花で色水を作っている。ピンク、むらさき、青。いろんなジュースができている。
「おひとついかがですか。」
と、笑顔をふりまいている。そんなはるが、手じゅつをすることになった。
 手じゅつのことを考えると、私ははるとけんかができなくなってしまった。
 私は、何も病気を持ってない。今まで、ぬったことも切ったこともない。十才の私が、したこともないことを、七才下のはるがする。かわいそうでたまらなくなった。
 はるには、「みっちゃん」という友達がいる。それは、家の周りを飛んでいたみつばち。はるとみっちゃんは、いつもいっしょに遊んでいた。みっちゃんも、はるの手じゅつをかわいそうに思っていた。
 ある時、みっちゃんがいなくなった。家族みんなでみっちゃんを探したが、いなかった。はるは、毎日、毎日、
「みっちゃん。でておいでよ。」
と、探し回っている。
 いよいよ、手じゅつをする朝、つかれきった様子で、みっちゃんが帰ってきた。
「ここから、遠くはなれた所に、『フリンビー』という花があるの。その花のみつをなめれば、元気になるのよ。」
と、黄色のびんを見せてくれた。
 私は、はるを思うみっちゃんの気持ちに、心を打たれて、泣いた。はるも、
「感げき」
と、泣きながら、みつを飲んだ。はるの顔に元気がもどってきた。
 そして、私のポケットにみっちゃんを入れて、病院にむかった。はるは、きんちょうしているようだったが、表じょうがやわらかだった。
 そして、はるの手じゅつもみんなに見守られて、無事、成こうした。みっちゃんやみんなの顔に、幸せな笑顔がもどった。
 はるのいない家で、私は考えた。私は、はるがいないとさびしい。私の大好きな読書も、する気になれない。今まで、はるは、自分の好き勝手に行動し、人の事など考えもしないと、思ってきた。だけどちがったんだ。はるは、はるなりにがんばって、楽しくやってきたんだ。はるから、私は、ずいぶんの元気をもらっていた。はるがいるだけで、まわりは明るくなる。私には、ないものをもっているはる。はるの行動が、少し理解できたように思えた。私は、はるが大好きだ。
「はるはフリンビーの花のみつ。」
という声がきこえた。
 ふとみると、みっちゃんが本にとまって、私をみていた。みっちゃんは私の心を、ぜんぶ知っているように思えた。
「なつは、健康に生まれてこれて幸せだね。」
と、みっちゃんがいった。
 私は、これからも、健康な体でがんばっていこうと思っている。生まれつき、しょう害を持った子や、病気を持っている子がいるけれど、私は健康だ。健康な私に何かできるのかというと、健康な人としてしょう害を持った子や、病気を持っている子のできない事を手伝ってあげることだ。だから、私は、はるのできないことを、手伝ってあげることだなと思った。
 みっちゃんは、
「なつ特せいのフリンビーの花のみつだね。」
といった。
 大きな声で歌いながら、花をつんで笑ってかけてくるはるのすがたが、まちどおしかった。

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